研究対象地域アフリカ地域(ケニアとセネガル)において、社会関係資本と学校運営との関わり方を動態的に捉え、経年的にその関係を追跡した。研究成果としては、同地域の学校運営は、既存の先行研究により提示されている「サービス提供者」と「受益者」に構築されるアカウンタビリティを軸にした関係ではなく、共に働くというコミュニティにおける「協働意識」によって機能しており、その動機や形態は必ずしも学習成果とは直接的には関連していないことが判明した。また、セネガルの学校調査を使用した定量的なデータの中で、学校運営委員会の機能と生徒の学習成果、退学との統計的に有意な関係が認められたものの、授業外で行われる補習や学校から親に対する学習と出席についての報告がかえって留年率におけるジェンダー格差を拡大している可能性があることも確認できた。 これらの成果から、ジェンダーによる社会関係資本の違い、生徒のジェンダーによる質的な学校経験および人生の選択肢と学校教育の位置付けの違い、さらにそれらの違いの経緯やその個人差に注目する必要性が認められた。特に、ケニアのカジアドカウンティ・ロイトクトック郡はマサイ族による伝統的な社会の中で、ジェンダーがどのように学校教育の中で機能し、特に住民参加型の学校運営を行う際の社会関係資本に影響しているのか、そしてジェンダーにより異なる社会関係資本の蓄積がどのような学校内外の活動に繋がり、男女それぞれの生徒の学習成果を生み出しているのか。この一連の流れを把握することによって、誰のどのような参加が誰のどのような学習成果につながるのか、について研究する必要性が認められた。 本研究の成果は2019年に『Community Participation in Schools: Equitable and Inclusive Education for All』(仮題)国際出版する予定である。
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