本年度は延長した研究期間であり、継続的に調査対象とする教育困難高校(主に、東京や高知)でのデータ収集やその整理、および比較対象となる諸地域の若者支援施設・団体や学校(特に、宮城や島根、一部はスペイン・台湾など)でのデータ収集とその整理を実施した。これまでにない広範なキャリア形成支援の活動とりわけコミュニケーションスキルを獲得するための各種の実践とその効用について、進路未決定の状態にある生徒や、教育改善に取り組む教師、さらにはスクールソーシャルワーカー職員等に聞き取りをすることができ、加えて高校での教育支援活動の直接の観察なども行うことができて、実態をより深く明らかにした。 これら実証研究の成果は、各種の論考(具体的には、「学校と子ども・若者支援」『教育社会学のフロンティア2』所収、「高校中退者問題と貧困格差」『月刊高校教育』所収など)にまとめ、発表してきた。特に重要な知見を示せば、従来と異なり、高校ランキングを意識して入学する生徒の実態に合わせた実践が構築されその成果が語られ始めていること(例えば、島根の通信制高校では、社会参加活動が単位化され、必須な通学日数も緩やかに設定して好評)、また外部の若者支援機関・NPO等と連携した意欲的な実践が日増しに拡大していること(例えば、東京ではドラマケーションなどの方法を専門家のアドバイスに沿って授業に導入)などがあげられた。 言いかえれば、従来の教科学習中心の視点ではなく、生徒相互のピアサポート力を活かして、学校という場での日々に生活・学習習慣の形成を促し、社会参加への行動力(アクティベーション)を育てようとする視点が強まってきたといえる。アンケートだけによらず、内部観察や聞き取りのデータを細やかに収集したことを活かして、現在の知見をより一層明瞭にまとめ、HP等にもアップするとともに、専門学会での発表や書籍化も進めていく予定である。
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