研究課題/領域番号 |
26381153
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | オーストリア / 政治教育 / 移民 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
研究初年度にあたり,1970年代のオーストリアにおける政治教育の本格開始時の状況と,今日的課題としての移民への対応という二つの対象に調査活動を限定し,以下の三つのアプローチで並行して研究を開始した。 第一に,先行研究を中心とする重要文献の収集である。上記の第一の研究対象については,オーストリアの研究者はもちろんドイツ人の政治教育研究者による研究文献も収集した。他方,第二の対象については,近年オーストリアで大きな注目を集めたボルツマン研究所の研究を中心に関連する文献を収集した。 第二に,特に第一の研究対象に関する新聞記事等の資料調査である。政治教育開始時の世論を把握する手がかりとして,2015年3月にオーストリア国立図書館において,先行研究で言及されている過去の新聞記事(マイクロフィルム)を確認し,あわせて同時期における関連記事を調査した。他方,一次資料としての当時の政策文書は,事前の問い合わせの結果,公文書館に利用可能なものは保存されていないことが明らかになった。また,第二の研究対象に関しては,今日の移民の統合の困難を報じるニュースの収集・記録を継続的に行っている。 第三に,教育省政治教育課スタッフとのコンタクトの強化と研究拠点の開拓である。特に第一の対象に関連して,ザルツブルクの二つの大学(ザルツブルク大学とザルツブルク教育大学)の政治教育研究者にインタビューを行い,現地における政治教育の発展に関するそれぞれの認識を確認したほか,次年度以降の協力の可能性について協議し,次回は中等教育で政治教育に携わる教員を訪問できることとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オーストリアの政治教育の促進要因と阻害要因の解明という研究目的について,先行研究をもとに申請者の仮説をまとめ,オーストリアの3人の研究者と意見交換をしたところ,概ね意見の一致を見た一方で,オーストリアの研究者の内部で見解が分かれる点があることも明らかになった。この差異は,今後4年間の研究の糸口として大きな意味を持つと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
初年度は,本研究に不可欠な現地研究者・行政官の協力体制を確保することができたが,次年度以降,実際の教育活動を進めている学校教員との接点を開拓・拡大していく必要がある。なお,研究代表者が渡欧できる期間が限られていることから,有意義かつ効率的に学校訪問・調査ができるよう,事前の日程調整が重要である。 また,期待された公文書が一部存在しないことが明らかになったことから,過去の経緯を知る退職教員などへのインタビューの可能性を開拓する必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは,勤務上の制約により,外国調査の日数が予定していたよりも若干短かくならざるをえなかったこと,ならびに書類のドイツ語校閲をまとめて発注したことにより,予定よりも安くおさまったことによる。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は,初年度よりも多方面にドイツ語による文書を送る必要があることから,その校閲に使用するのに加え,初年度よりもオーストリア国内での移動に多くの費用を要する予定であることから,そのために利用することを考えている。
|