研究課題/領域番号 |
26381153
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 孝弘 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (40242234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 政治教育 / オーストリア / 政治的中立性 / ドイツ |
研究実績の概要 |
今年度は,研究計画に従い,オーストリアにおける政治教育の現状を比較的近年の発展経緯の中に位置づけることで,ドイツならびに日本における政治教育の展開との共通点と差異を描き出すことに注力した。 主な分析は以下の二点である。 第一に,前年度末にザルツブルクの中学校で行った授業観察の結果を,教師の発話,とりわけ生徒に対する問いかけの内容という点から分析した。その結果,特定の政治的概念を生徒が文章で説明できるようになることを重視している様子を見てとることができた。これは,やや古い政治教育観を意味し,その担当教員が指導的な立場にあることを考慮すると意外ではあるが,観察対象が少ないこと,また生徒の学力などを考慮すると,一般化には慎重である必要があり,追加調査が求められる。 第二に,オーストリアにおける政治教育をめぐる環境を,18歳選挙導入後の日本における状況と比較分析した。具体的には,2015年にウィーンの中等教育教員に対して実施されたアンケート調査と,翌年に日本の各紙が行ったアンケート調査の比較から,日本の教員のあいだでは,ウィーンの教員の2倍ほどの割合で,自分の授業が政治的中立性違反を問われるのではないかとの不安を持っていることがうかがわれる結果となった。当然のことながら,こうした異なるアンケート調査の結果を比較することも厳密な意味では無理があり,したがってそれが意味するところを追究すると同時に,その暫定的な結論そのものについて,さらに調査と分析を進めることが必要である。 なお,これらの研究成果については,すでに関連学会での報告ならびに研究紀要への掲載という形で発表しており,また,その他のより開かれたメディアでも発信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果は順調にまとめられ,発表できていると考える。昨年度末に計画していた現地調査が,諸々の事情により実施できなかったことは予定変更と言えるが,それは新年度当初にすでに実行しており,研究の進展状況への実際的な影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画では労働組合の文書館における資料調査に一定の期待をかけていたが,調査の結果,そうした資料が少なくとも外部の研究者が読める形では残されていないことが判明した。その分については,聞き取り調査により資料の不足を補う必要がある。 上記の点以外についてはこれまでのところ順調に研究が進んでおり,当初計画どおりに進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に予定していたオーストリアでの現地調査が,個人的な事情により実施できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
予定していた調査は次年度当初に実施しており,実質的な研究の遅れはない。
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