最終年度は,以下のように研究成果を一冊の書籍(単著)にまとめたほか,学会等で研究報告を行なった。 具体的には,本科学研究費による研究成果をもとに単著『政治教育の模索-オーストリアの経験から』(名古屋大学出版会,2018年)を刊行し,そこでは,ドイツとの比較においてオーストリアでなぜ政治教育への取り組みが遅れたのかについて,20世紀初頭の政治環境,ファシズム体制の相違,戦後の国際関係のなかでの国家再建,ならびにそれらを通して形成された国内の政治体制の観点から説明することを試み,さらに1990年以降,オーストリアでも遅れを取り戻す動きが急速に進んでいることを述べた。本書に対しては,政治教育研究としてはもちろん,オーストリア政治文化史の研究としての評価もいただいている。 また並行して2018年6月23日に東広島芸術文化ホールくららで開催された第54回日本比較教育学会大会において,上記の著書とほぼ同じ内容をもって「政治教育による民主化か,民主化による政治教育か?-オーストリアにおける発展過程の分析」と題する研究発表を行い,質問と批判について応答したほか,2019年3月10日に早稲田大学国際会議場で開催された早稲田大学公民教育研究会年次研究会ならびに2019年3月20日に早稲田大学大学院日本語教育研究科で開催されたシンポジウム「政治教育,平和教育,そして日本語教育-ドイツの実践例を中心に」でも研究報告を行なった。 以上の著書ならびに研究報告に対しては,本研究を遂行する上で貴重なレスポンスが多く寄せられ,それらをもとに随時,研究成果ならびにそのプレゼンテーションを微修正したほか,本研究を発展させる形で取り組む次の研究を構想した。
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