本研究は日本における多文化保育の現状と課題を整理し、多文化保育のありかたを多角的な視点から明らかにすることを目的とした。その際、スウェーデンの多文化保育の現状と課題を参考とした。 日本の外国人が多く居住する地域における調査結果からは、外国につながる子どもへの保育に経験を持つ保育者が、保育に対しては前向きに捉えているものの多くの困難を感じていることがわかった。それに対しては様々な工夫し、また自己学習を重ね対応していた。しかしその多くは、外国につながる子どもへの対応が中心となる傾向が見られた。またその要因として、多文化保育に関する基礎的な学習経験や、研修機会が少ないこと、国や自治体のサポートの少なさがあげられた。ただし保育の内容の工夫によって子どもの多様性が広がる取り組みも確認され日本における多文化保育実践のヒントを得ることができた。 他方で、移民が多いスウェーデンにおいて多文化保育は、国や自治体の中心的なテーマとなっており、特に自治体が多文化保育に対する課題を捉え、地域の園のサポートするような施策がつくられていた。特に子どもの言葉の問題は課題となっておりそれに対する様々な取り組みが明らかになった。これらは日本における多文化実践の参考となり得るものであった。またスウェーデンは自治体のサポートがあり、研修の機会も日本と比較して多いという結果であった。 これらのことから、今後日本における多文化保育が対処的なものばかりでなく、本来の目的である多文化共生保育を行うためには、保育者の養成段階や現任研修の充実が必要であるとともに、国や自治体レベルでの取り組み、さらに保育現場におけいて多様性を育む保育環境の充実等が必要であることが示唆された。
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