本研究は「教育する側=高校教員側」に着目し、高校生の学習離れの背景を探るものである。2016年度は、これまで実施した文献調査ならびに高等学校の訪問調査から得られた知見を踏まえつつ、2つの質問紙調査を実施した。 1つは、全国高校教員(国数英理社の5教科担当)を対象にした調査であり、調査会社のモニターを用いて実施した。回収数は690だったが、学校のタイプ別に特徴をみることに注力したその分析からは、(1)進学校、中堅校、進路多様校のなかでもっとも定期考査作成に満足していないのは中堅校に勤務する教師であること、(2)従来の作問トレーニングや研修を行ったところで、それは中堅校教師にとってのブレークスルー要因になりにくくなっていること、(3)しかし同時に、逆説的ではあるが、定期考査の難易度設定に悩む度合いは中堅校教師でもっとも低く、中堅校教師の意識等にも問題がある可能性があること、などがみえてきた。 そしてもう1つは、訪問調査でしばしばキーワードとしてもちあがった「保護者」に対する調査である。高校教育に及ぼす保護者の影響力の強さを指摘する声を意識したものだが、具体的には大学進学を第一希望とする高校2年生の子どもを持つ母親に対して実施した(調査会社のモニターを利用、回答数826、比較対象として30代大卒の母親に対しても実施)。そしてその分析からは、(1)高校側がすでに歩み寄りをみせているからか、学校側が提示する指導内容自体に疑問を抱いている保護者は少ないこと、(2)ただ他方で、高校の教師を「(教科指導・進路指導面で)頼りになる」と認識する保護者の少なさという点で、とくに中堅校は悩ましさを抱えていること、(3)「無理をして難しい大学に進学する必要はない」と考える保護者の比率は、進学校に比べて中堅校でかなり大きくなっており、そこにも中堅校の難しさがあること、などが浮き彫りとなった。
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