本研究は,中学校技術科の学習において「技術的能力を高める先行体験学習」について検討し具体的指導法の開発を試みたものである。そして,開発した指導法の有用性を教育実践から検証し,先行体験学習のありかたを考察したものである。28年度の具体的な研究実績は以下の2点である。 1点目は,回路推考用の試行ツールを用いたアクティブ・ラーニングを実践しその教育効果を検証した。同思考ツールは,電源や負荷などの図記号が印刷されており,ホワイトボートマーカーを用いて配線を何度もかき直すことができるようにしている。また,スイッチの配置を変え,様々な電気の流れを選択できるようにしている。検証の結果,同ツールを用いた教育実践により,エネルギー変換や電気回路等に対する関心が高まるとともに,想像力や思考力,コミュニケーション能力などが身に付けられることが推察された。 2点目は,26年度に開発したSTF基盤を用いた回路実験ボードを開発し教育実践を試みた。同ボードは,実際に配線をつなぎかえ試行錯誤しながら回路設計のトレーニングができるようにしている。検証の結果,同実験ボードを用いた教育実践により,電気回路や製作品の設計に対する関心が高まるとともに,回路設計の能力が身に付けられることが推察された。 研究期間の3年間を通じ,技術的能力を高める様々な先行体験学習を開発できたと考えている。それらは主に,技術科の設計学習において試行錯誤への動機づけを育む結果となり,技術的能力を高める先行体験学習の具体事例を示すことができたと考えている。
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