研究課題/領域番号 |
26381171
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
吉田 剛 宮城教育大学, 教育学部, 教授 (10431610)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地理カリキュラム / 社会科 / イギリス / オーストラリア / アメリカ合衆国 / 地理的概念 |
研究実績の概要 |
1)諸外国地理教育カリキュラムの地理的概念,とくに「持続性」に着目し,比較・類型化した(トップダウン型・地理的概念活用重視型・ボトムアップ型)。分析対象は,米地理1994,英地理2007,豪地理2013,香港地理2011,新嘉坡中学校低学年地理2014,中国地理2011,台湾小中社会科地理2008,我が国中学校学習指導要領社会科地理2008である。その成果をもとに我が国の課題を検討し,コンピテンシー重視の地理カリキュラムのモデルや授業構成システムを開発した。地理学5大テーマや国際地理教育憲章より,資質に繋がる「持続性」エレメントの内容構成も行えた。 2)米国のHSGPからの主な地理カリキュラムの特徴を把握し,とくに米国地理1994にみる地理的概念の機能を探究した。地理的概念の機能とその抽象度との関わりを議論しながら,その特徴を考察した。一方,戦後からの我が国中学校学習指導要領地理カリキュラムの変遷について,内容と方法の側面に機能する地理的概念に着目して分析し,その特徴を明らかにした。その上で米国との対比から,今後の課題を言及した。 3)豪・NSW地理2015の地理的概念をもとに,地理的概念の内容と方法の側面への機能と,カリキュラム・レベルにおける地理的概念の抽象度から,理論的な枠組みを構築した。それをもとに我が国小学校学習指導要領解説社会の目標と内容を分析し,地理的概念に基づく小学校社会科カリキュラム・モデルと単元の開発を検討した。併せて,NSW地理2015の地理的概念から,我が国の小学校の地理的単元と中学校社会科地理的分野の教科書分析も行い,単元構成レベルでみられる地理的概念の序列・構造的特徴を見いだした。 4)フィンランド地理カリキュラムを検討し,自然科学と教育学が強調され,イギリス政府型地理カリキュラムの影響を大きく受けていないことが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画の通りに行えた。また発展的な成果も一部に得られた。それは次の3つである。(1)我が国が推奨するESDに関わる地理的概念「持続性」に着目した議論を行い,そのエレメント構成も行え,今後の我が国の社会科地理的分野とESDとの繋がりの可能性を高められる成果となった。(2)地理と同じ,人文科学系の歴史教育カリキュラムの歴史概念も,NSW歴史カリキュラムの歴史的概念を通じて検討した。その結果,地理的概念と同様に,概念の序列・構造的な特徴がみられた。(3)国際地理学連合の地理教育委員会の国際会議(IGU-CGE 2016 Singapore)に参加し,米英研究者による国際的視野からのジオ・ケイパビリティと,本研究との関連を考える機会が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
イギリス政府型地理教育の特徴や波及などについて総体的にまとめていく。その他,次の3つに的を絞った検討も発展的に行う。(1)イギリス地理教育におけるジオ・ケイパビリティやパワーナレッジなどの新たな理論的な議論を検討する。(2)次期中学校学習指導要領社会科地理的分野の授業実践を見据えて,新しい社会科地理カリキュラム・モデルと事例単元の開発を精緻化する。(3)地理的概念と探究発問との関係性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの整理や分析などに必要なPCなどの機器の物品購入が遅れ,また海外現地調査の一部が行けなかったため,次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
機器の物品購入を適切に行い,研究上で必要となる海外現地調査を適切に行う予定である。
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