研究課題/領域番号 |
26381173
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
降籏 孝 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (20302284)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 苦手意識 / 図画工作 / 美術 / 教育コンテンツ / 教員養成 / 教員免許更新講習 / 造形美術教育 |
研究実績の概要 |
今年度は、本研究における3年次計画の1年次の第1段階として、図画工作と美術に対する児童・生徒の現状を客観的に把握すべく実態調査を実施した。最初に、大学における教員養成の必修講義の学生2クラス幼稚園教諭養成講義の保育(表現)受講生の合計122名の大学生に実態調査を実施した。次に附属学校教員の協力を得て4年生以上の小学生271名の児童、附属中学校の中学生全生徒458名に同じ調査を実施することができた。さらに一般公立中学校生徒458名にも実施することができた。大学生と小学生、中学生の調査ができるとその間の高校生の実態も気になり県立高校の教師に協力を仰ぎ、2つの高校の生徒218名でも調査を実施した。小学生から大学生まで、合計1599名を対象に図画工作と美術に対する実態調査を行うことができた。 その調査結果については、平成26年度山形大学研究紀要(教育科学)に投稿し、研究テーマ「図画工作・美術における〔意欲〕・〔苦手意識〕の実態と考察-小学生・中学生・大学生の実態調査結果から-」としてまとめることができた。 その実態調査と併行して、図画工作科教育と美術科教育における既存の教育コンテンツについて研究考察した。その結果、今まで教育コンテンツとして重視されてきた題材に関するもの、指導法や評価に関するものに対して、第3の視点となる学習空間の質に着目しそれを改善することが重要であることを明らかにした。その研究成果については次の論文にまとめて発行することができた。美術教育における全国学会レベルの大学美術教育学会誌『美術教育学研究』第47号に投稿し、査読後に掲載された。 また平成26年度4月に実施した実態調査の現状から、1年後にその現状がどのように改善されるのか研究し、その研究成果は美術科教育学会上越大会において「図画工作・美術への〔苦手意識〕の研究Ⅱ-苦手意識の現状とその解消に向けてー」口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、第1段階として図画工作と美術の現状を客観的に把握するために、児童・生徒に対する実態調査を計画し、実際に実施することができた。その実態調査は、当初予定した対象の範囲を越えて小学生から中学生・高校生・大学生まで大規模な実態調査として実施することができた。この調査結果から、改めて多くの児童・生徒に図画工作や美術に対する苦手意識が内在していることが確認できた。それは、小学生の中学年ぐらいから芽生え初めて、学年があがるに従い徐々に苦手意識が増えていること。そして一度身についてしまった苦手意識は、児童・生徒から大学生になるまで持ち続けているという現状を確認することができた。この結果から、本研究の意義と役割を再確認するとともにその重要性を痛感することになった。 その研究成果については、造形美術教育に関して全国レベルの大学美術教育学会と美術科教育学会において口頭発表することができた。また大学美術教育学会の学会誌や大学研究紀要に、その研究成果論文を投稿し、査読の末に採択され発行することができた。 これらのことは、3年次計画における第1年次目の研究成果としては、自分としてもかなり順調にすすんでいる段階といえるかもしれない。 しかしながら、当初の研究計画では国際美術教育学会に出席し、本テーマに関する教育コンテンツの情報収集も入れていたが、会議の日程や本務の仕事との関係で残念ながら今年度の国際会議には出席することができなかった。その点、当初の計画以上に進んでいるとはいえない状況といえる。 以上のことから、総合的に判断すると「おおむね順調に進展している」といえる、
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第1段階で明らかになった図工・美術への苦手意識を抱かせないための要素とそれを具体化した教育コンテンツについては、第2段階として、平成27年度の大学の授業において実際に活用して詳細に検証していく。また、平成26年度4月当初に実施した実態調査の結果が、平成27年度の結果と比較研究するために4月当初に同様の実態調査を継続的に行うことにする。 当初の研究計画に入れていた諸外国の教育コンテンツの情報収集と考察については、是非とも平成27年度の研究の中に入れていきたい。その手段については、国際美術教育学会や全米美術教育学会の参加による方法を計画した。本務の全学業務との関係で、どれほど 実現できるのか不明であるが、極力実現していくように努めていく。 研究と本務とのバランスが課題であるが、海外の教育コンテンツの情報収集については、渡米する手段だけでなくインターネットや文献等の手段も活用して柔軟に対応していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画では、全米美術教育学会に参加し本研究テーマに関する海外の教育コンテンツの情報収集と意見交換をする予定であった。しかしながら日程や本務の業務等の関係で残念ながら渡米することができなかった。そのため通訳や翻訳等で計画していた人件費・謝金も支出されなかった。旅費については、国内の全国レベルの造形美術教育の学会である大学美術教育学会福井大会そして、お茶の水女子大学附属学校の研究協議会に参加することで、科研費から支出させていただいた。しかしながら年度末に開催された美術教育学会上越大会において、本年度の研究成果を発表すると共に参加された研究者との意見交換や情報収集することができ、とても有意義な学会参加であったが、年度末ということもあって科研費の配分予算で執行せず、不本意ながら自費で旅費を負担することになってしまった。 以上の理由により、51,643円の助成金が残ることになってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の旅費については、当初計画した内容の他に、造形美術教育において全国レベルの研究団体の1つである造形教育センターが本年度60年目となる記念大会を夏に開催することになっている。この造形教育センターの大会に参加し、本研究テーマに関する情報収集や研究者や教育実践者たちとの意見交換を行うことを新たに研究計画に入れることで、平成26年度から繰り越された助成金を有効に活用したいと考える。 また、平成26年度で実施した実態調査について、その集計業務については研究代表者自身で行い、結果的にはかなりの時間と労力を費やし大きな負担になってしまった。平成27年度も同規模の実態調査を行う予定であるので、その集計業務については人件費を使って実施し、研究代表者の負担軽減をはかりたいと考えている。
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