平成28年度の計画は、大阪万博を取り巻く前衛・抽象表現美術の影響、デザイン教育の登場と衰退、総合化と造形遊びの導入について、総合的な視点からその変遷・特徴を描き論点をまとめることである。 これに従い、前衛・抽象表現美術の影響については、万国博美術展におけるテーマ・表現様式と現代美術のジャンル・主題の広がり、展示方法をもとに、万博美術館図録を検討した(『美術教育学研究』)。次に、大阪府日本万国博覧会記念公園事務所における聞き取り調査を2回に分けて実施し、研究内容にかかわる関連資料を得た(9・10月)。デザイン教育の登場と衰退については、口頭発表「「論文ダイジェスト」(『日本美術教育総鑑』所収)におけるデザイン教育の諸課題」(第39回美術科教育学会静岡大会概要集)にまとめ発表した。総合化と造形遊びの導入については、デザイン教育の諸課題に関連させ、低学年の内容領域としての造形遊びの位置づけを総合的な視点から検討・発表した。 大学研究室用ホームページの作成を行い、投稿論文「日本万国博を契機に拓かれた美術教育のコンピテンシー」を掲載し、メディア公開した。これらは、基盤研究(C)『平成28年度研究実績報告書』(2017月3月)に集約した。 前年度の課題であった主題・題材論研究については、「題材・主題論の検討」として研究者2名の関係論文を整理し、東京学芸大学紀要にまとめた。加えて、主題に関する坂本小九郎の主題・意味生成理論と大阪万博における岡本太郎のテーマ設定の分析を通して、自己内に二次的に生成される主題の役割を描きだすことができた。 以上、平成28年度における研究成果は、前年度の研究計画の遅れを克服し、「大阪万博以降の美術ジャンル・主題をめぐる論点と図画工作・美術科教育内容への影響」をまとめることができ、おおむね成果報告に到達することができた。
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