研究課題/領域番号 |
26381183
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
足立 幸子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30302285)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 読書力 / 評価 / 読者想定法 / パートナー読書 / 交流型読み聞かせ / 国際情報交流 / 国語教育 / 学校図書館 |
研究実績の概要 |
本研究では、諸外国で通用している読書力評価を参考にし、日本の学校現場で児童・生徒・教員が使用する読書力評価パッケージを開発することを目的としている。読書力評価パッケージとは、テストの形態による評価と、読書指導場面における様々な読者反応を評価する方法を示した「読書評価キット」から構成される。そのために次の2点を明らかにする。 (1) 諸外国の読書力評価を参考にし、小学校・中学校・高等学校で使用できるテストを開発する。 (2)読書活動場面(読書指導法の使用場面)に即した質的分析手法を開発し、教員用ガイド(マニュアル)と読者反応の示し方を表した児童・生徒用のワークシートやガイド、及び評価基準表(ルーブリック)を表現した「読書評価キット」を作成する。 (1)に関しては、前年度よりも幅を広げて、諸外国の読書力評価についての情報を収集することができた。特に、ピーター・アフラーバック著『読むことの評価を理解して使用すること(K学年~12学年)』(第2版、国際読書学会刊)についてはかなり詳細に検討し、日本での適用を視野に入れた論文を執筆することができた。マイケル・F・オピツとティモシー・V・ラジンスキー『さようならラウンドロビン』(改訂版、ハイネマン刊)では読み聞かせ及び音読を通した評価について、リギー・ロートマン著『読書の本質』(ハイネマン刊)では日々の授業の中での評価について、情報を集めることができた。 (2)に関しては、ジーン・アン・クライドの吹き出し法にヒントを得て、読者想定法という読書指導法を開発しつつある。その中で吹き出しのワークシートを用いた質的評価法を検討した。教員用ガイドは作成しつつあるが、評価基準表などは、もう少し実験的研究を行いながら、検討を重ねていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸外国の読書力評価についての情報を収集することは、当初予定していた以上にに行えた。ピーター・アフラーバック著『読むことの評価を理解して使用すること(K学年~12学年)』を用いた論文の執筆はその成果である。その他にも、マイケル・F・オピツとティモシー・V・ラジンスキー『さようならラウンドロビン』の読み聞かせ及び音読を通した評価、リギー・ロートマン著『読書の本質』の授業の中での評価について、情報を集めることができた。その中では、本研究で扱ってきた「パートナー読書」につながるような、パートナーを利用した評価の仕方が解説されており、今後の評価の視点として検討を重ねていきたいと考えている。しかし、テストの開発については、小学校の教科書が改訂され、様々な児童書が紹介されているにもかかわらず、十分フォローしてテストを作成することができなかった。Scholastic Next Step Guided Reading Assessment(SNSGRA)についても、概観はしたものの、十分な検討までは至っていない。 一方、主にノンフィクションの読書に焦点をあてて、読者想定法という読書指導法を開発しつつある。これは、「リテラチャー・サークル」「パートナー読書」という読書指導法とはまた異なる次元で、現代社会における読書の本質をとらえている方法である。その中で使用するワークシートを評価するということは読書の評価として機能しそうであるとの見通しが得られた。しかし、評価基準表を作成するまでには至っていないことから、さらにデータを積み重ね及び分析をしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、平成27年度にあまり行えなかったテストの開発を行っていきたい。特に、平成28年度より中学校の教科書が改訂されるところから、その新しい中学校の教科書に「紹介図書」として紹介されている本の中から、中学校やさらに上級にあたる高等学校の生徒に対しての読書テストを開発していく予定である。 パートナーを用いた読書の評価については、小学校で「パートナー読書」の実践を行い、データを積み重ねていきたい。 読者想定法を用いた読書指導については、平成27年度に実施し、児童の読者反応を記入したワークシートを入手している。これを分析し、論文を執筆する。さらに、評価基準表を作成するかどうか検討していく予定である。 さらに、英語圏を中心に諸外国の読書の評価について情報を集めていきたい。
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