研究課題/領域番号 |
26381185
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研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
宮川 健 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (30375456)
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研究分担者 |
岩崎 浩 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (80251867)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数学教育学 / 算数・数学教師 / 教員研修 / 教師教育 |
研究実績の概要 |
本研究は,算数・数学の教員研修における質の異なる教師の学習を特定し,個々の教員研修の役割を明確にすることを目的とした.とりわけ,算数・数学教師らによる「地域・地方の研究会」と教育委員会から派遣されて推進される「教職大学院における研修」という形態の大きく異なるわが国の二つの教員研修を取り上げ,各々における教師の学習の特徴と役割を明らかにすることを主眼とした. 平成27年度は,主に「地域・地方の研究会」についての研究を進めた.新潟県上越地域で行なわれている小学校及び中学校の算数・数学教師の地域の非公式の研究会に焦点を当て,そこでの教師の学習の特徴づけを試みた.具体的には,この地域の研究会が算数・数学教師による授業研究の一部をなしている点に注目し,地域の研究会外の関連する活動(附属学校での授業研究会)についてもデータを収集した.それらを地域の研究会で収集したデータと併せて分析を進め,地域の研究会内外の活動全体を通した教師の学習を検討した.その結果,そこでのわが国の教師の学習が「個と集団の往還」及び「メディアとミリューとの往還」という教授人間学理論の視点からうまく特徴づけられることが明らかになってきた.このことは,教師教育においては協働のみでは不十分であること,外からの新たなリソースが大事になることを示唆する.これらの結果は,2015年夏にフランス・ブレストで開催されたフランス数学教授学夏期講習会の招待講演で発表するとともに,現在執筆中の複数の論文で発表予定である. 一方,「教職大学院における研修」については,前年度より進めてきた教職大学院における現職教員の実習日誌の記述の変化の分析結果を論文にまとめ,2015年夏にオーストラリア・タスマニアで開催された国際数学教育心理学会 (PME) 年会で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,算数・数学教師らによる「地域・地方の研究会」と教育委員会から派遣されて推進される「教職大学院における研修」という二つの教員研修を分析の対象としている.今年度は主に前者について分析を進め,研究実績の概要で述べたとおり興味深い結果が得られている.国際会議等でも発表でき,現在複数の論文の執筆に着手できていることは,研究が概ね順調に進展していることを示しているであろう.
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本研究課題の最終年度である.これまでは,二つの形態の異なる教員研修について別々に分析を進めてきた.最終年度の課題は主に2点ある.一つは,それぞれの分析を精緻化し考察を深化させ,論文にまとめることである.もう一点は,両者の分析の結果を合わせて比較検討し,算数・数学教師の学習の仕組みについて総合的な見解を提案することである.特に,「個と集団の往還」及び「メディアとミリューとの往還」といった教師の学習の内的な仕組みのみならず,教師の学習を可能とする環境・制度的な条件といった外的な仕組みをも検討したい.これらの研究については,より多くの教員研修の事例が望まれることから,同様の問題意識のもと別の事例で研究を進めている海外の研究者と国際共同研究の形で進めていくことにした.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の初年度(平成26年度)に予定されていた海外の研究協力者の招聘が実現しなかったことが次年度使用額が生じている理由となっている.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度には大きな国際会議が複数あり,当初の予算では十分でないため,その旅費に使用する予定である.
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