研究課題/領域番号 |
26381186
|
研究機関 | 上越教育大学 |
研究代表者 |
阿部 靖子 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (00212556)
|
研究分担者 |
安部 泰 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10467087)
川崎 直哉 上越教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (40145107)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ものづくり / 図画工作科 / 理科 / 小学校中学年 |
研究実績の概要 |
子どもたちが図画工作科で学ぶべき学習内容に併せて,音楽や光などを用い感性に訴えながら,科学技術や環境問題など他教科に関する要素も積極的に取り込んだ教材を開発することが本研究の目的である。特に,ものづくりを楽しみ,ものを自分の手でつくり出すことに興味を持つ子どもたちを義務教育の早い段階から育てる必要性と,従来の美術における工芸的な考え方に偏ったものづくりからの脱却と,現代美術,先端テクノロジー,プロダクトデザインなどの芸術分野に繋がる小学校中学年対象のものづくり教材を開発し,その評価を行うことを目指している。 今年度は,昨年度の教材開発をもとに,特に図画工作科の内容に加えて理科の内容が関わることによる新しい視点からの複合教材を検討した。小学校中学年の教材としての可能性を考慮し,その中で先端技術を直接体験しながら学べる要素も盛り込んだマイクロコンピュータ(マイコン)を用いた視覚や聴覚などの感性にも訴える複合教材の開発を行った。具体的には,自分で作曲した音符を書き込み(ダウンロード)演奏できる電子オルゴールとLEDによる電子イルミネーションを組み合わせた複合教材を試作し,大学生に対して製作過程も含んで試行的に授業実践を行った。その実践においては,教材としての有効性に高い評価が得られたと同時に課題も発見された。試作品では大学生を対象としたため,電子回路製作や難易度の高い材料加工も行ったが,小学校の教材として用いるときは,電子回路の部分はブラックボックスとして与え,複合教材本体の部分は加工しやすい紙スチレンボードを使用することにより,子どもたち自身の「デザインと製作」,および簡単な画面操作による「音符プログラミング」を中心に,子どもたちの独創性・思考力を育てることを考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は上記のように当初の計画通り,マイコン搭載の複合教材を開発し,簡単な画面操作によるソフトウェアを用いて,大学生を対象に試行実践を行った。製作した教材は,圧電スピーカからプログラムした音程の電子音を発音しながら,同時に,自動的に色彩が変わる多色LEDが発光するというものである。大学生に対して試行実践を行った際に,ハードウェア製作やプログラミング環境,ソフトウェアの機能等に関していくつかの課題も見つかったが,改善が可能なものに対しては平成27年度に検討を行い改良した。例えば30名程度の受講者に対して授業実践を行おうとすると,受講者の理解度の差が大きいことの問題や,マイクロコントローラ搭載のマザーボードの動作不良率を0とするために,(準備のために一部の部品ハンダ付け等をあらかじめ学生の手作業で行うため数パーセントの動作不良率が生じる)作業手順の工夫とチェック体制を見直した。さらに,マザーボード基板のパターンデータを作成してそれに基づいた基板製作を外注することにより,飛躍的に動作不良率を減らすことができ,研究室レベルとしては大量の100個以上のマザーボードを動作不良率をほぼ0で製作できるようになった。 開発した複合教材は今のところ1種類であり,教材としての完成度や製作方法などをさらに確実なものとする必要があるが,研究全体の進捗状況という面から判断すると,2年目としては,ほぼ計画通りに進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は,最終年度であるため具体的な指導計画に沿って,前述の複合教材をもちいた授業実践の計画を進めながら,さらに子どもたちの興味を高めるような別の複合教材の開発も考える。具体的には前述の複合教材に「動き」を付加した「電子コマ」を考えている。すなわち,子どもたちが製作したコマが,音と光を発しながら回転するもので,回り始めた時点から発音と発光を開始して,コマが回っていた時間は,倒れた時点での音楽の旋律で分かるというものである。上記の様な電子コマは市販もされているが,自分でプログラムした音程の曲を発音するものはなく,また発光するLEDの色も子どもたちが自由に選ぶことができるなど,紙スチレンボードを使用することによるコマ本体の部分の「デザインと製作」に併せてさらに自由度が増えることから,子どもたちの独創性・思考力を育てることができると考えている。 上記の「電子ゴマ」の量産が間に合えば,それを用いて(量産が間に合わない場合には最初の複合教材を用いて)授業実践を行い,複合教材として評価や授業全体の課題等を把握して,最終的に,教育現場で実践する際に必要となる小学校教師用のマニュアル(指導書的なもの)を作成する。ここで考えている教材は,アートの他にサイエンス及びテクノロジーの三者を関連づけたものとなっており,これまでこのような考えに基づく複合教材がないことから,取り組む意義は大きいと考えている。しかし,マイコン搭載の複合教材ということで,教える側にも抵抗が生ずる可能性もあることから,その点を考慮して,教師が最低限の知識を保有していれば理解できるように,教育現場での普及も念頭に小学校教師用のマニュアルを作成する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由については,平成27年度の最後に次年度使用する予定の電子パーツ等を購入する計画であったが,ソフトウェアの検討などを行っている間に購入申請が遅れたものである。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度当初には購入予定であるため,研究全体の進捗には影響がないと考えている。
|