研究課題/領域番号 |
26381187
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
隅 敦 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30515929)
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研究分担者 |
三根 和浪 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80294495)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 初任者教員 / 若手教員 / 実技教科の指導力 / 音楽科 / 図画工作科 / 体育科 |
研究実績の概要 |
本研究では,小学校の若手教員が初任の段階から教科教育の指導力を形成し子どもの学びの質を向上させて行く過程を,特に実技教科の授業の指導力形成の過程に視点を当て,その実態を調査して課題を検討することを目的としている。 研究期間内に,まず,初任者として配属された小学校に対する訪問し,聞き取り調査および授業記録を行う。次にそこで得た課題を整理し,学校教育の現場で求められる実態と大学学部時代の講義で求められる内容についての検討をする。そして,若手教員の実技教科に対する指導力向上に向けた大学と教育行政および学校教育の現場に向けての若手教員育成のための提案を作成する。 本年度は,研究協力者の学校を訪問し,実技教科の記録ビデオおよび聞き取り調査を行った結果,次のような実態が明らかになった。 初任者研修では実技教科を対象にした内容は公には存在しないという実態を確認できた。そこでは,児童管理が上手くできないことから学習成果をあげられないという共通の悩みがうかがえる。これらは,初任段階における実技教科の指導力形成を阻害している要因であると捉えられるが,一方で,非公式にベテラン教員の授業を見る機会を得たり,授業の補助をしてもらったりすることで,指導力向上の一助とされる経験も積んでいる実態も明らかになった。 授業分析では,正式な発話が説明的な内容か,管理的な内容かはっきりしないことが原因で,一斉指導が徹底しない場面や,経験不足からくる不測の事態に対応した発話ができないなど,指導の未熟さが露呈する場面もうかがえた。また,実技教科特有の開放的な雰囲気をつくることによって,終始,児童のざわつきを押さえられない等,管理に関わる課題も見受けられた。ただし,指導の流れは事前に整理しており,掲示資料などの授業環境の設定においても,算数科や国語科同様に手抜かりなく行っている様子は確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定では,調査対象に選んだ4人分の初任者教員の全員分の聞き取り調査の分析を行っているはずであるが,綿密な質的分析に予想外に時間がかかり,3人分しか終わっていない状況である。また,授業ビデオ分析においては,詳細な分析手法を用いた結果ではなく,傾向をまとめた程度に留まっており,本年度の達成率は60%である。 研究1年目の正式な結果が出ている段階ではないが,現時点までで発表できる範囲内の内容について,第36回美術科教育学会上越大会において口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目の予定としては,まず,1年目の聞き取り調査の質的分析を完成させた後,特に授業ビデオの分析を終了させ,9月に行われる第54回大学美術科教育学会横浜大会において,口頭発表を行う予定である。そして,10月以降初任2年目の研究対象の若手教員に対して聞き取り調査を行うと共に,実技教科の授業記録をビデオ撮影する。ただし,1年目に若手教員を4名しか研究対象者にできなかったことから、本年度初任者の教員4名を追加して新たに聞き取り調査と授業記録を行い,質的調査の内容を充実させる予定である。年度末までにこれらの調査データを分析し,顕著に見られる内容を中心にまとめて,第38回美術科教育学会大阪大会において口頭発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目も、調査訪問時に記録と比較しながら,研究対象の若手教員の実技教科の授業力向上の過程を記録していく。特に,授業内容がどのように工夫改善されていくのかについて注目していく。また、採用から2年目に入り,初任者研修の制度で研修を受けることができない実態を踏まえた質問を行ったり,授業記録を撮ったりする。ただし、研究対象者が4名にとどまったために、新たに初任段階での記録を取るために4人の若手教員の調査を追加して行う。したがって、2年目も調査研究のために研究対象者の学校を訪問するための旅費や、音声記録のテキストデータ化作業費用等が必要になってくる。 当初2年目までのまとめを学会誌に投稿する予定であったが、初年度のデータ分析が完成していないこともあり投稿は取りやめ、その関連費用を記録用デジタルビデオカメラの購入費やテキストデータ化作業費用に充てて、授業記録のデータを可能な限り増やしたいと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費として、35,000円でデジタルビデオカメラの購入に充て、調査対象者の学校を訪問するために調査研究旅費として90,000を計上する。さらに、人件費・謝金として音声記録のテキストデータ化作業費用145,000円を予定する。
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