RLAとは、市川(1996)によって提唱されたResearcher-Like Activityの略称で、その基本的コンセプトは、「研究者の活動の縮図的活動を学習の基本形態とする」ことにある。狩俣(1996)は、本物の研究者の活動を学習者のレベルに合わせて模擬した縮図的活動であるRLAを中学校の数学授業の導入によって、研究者の活動を模擬体験しながら、主体的な探究活動とともに学習者の意欲を引き出す教育実践に成功している。本研究では、狩俣の研究をうけ、高校の数学教育にも継続・発展させ、RLAの事例開発を通して、その教育的な意義や価値について検討してきた。これまでの事例研究では、RLAが生徒の主体的で能動的な数学学習に有効に働き、探究的な態度を育むくこと、近年注目の集まるアクティブ・ラーニングの一形態(探究型)であること、ポスターセッションにおける説明や質疑応答等の場面を通して数学的コミュニケーション能力や数学的表現力の育成にも資することなどが挙げられた。最終年度も、現場教員を中心とした公開の第3回RLA研究会を開催し、研究協力者を中心とする公開授業と実践事例(パスカルの三角形等)に基づく講演と相互の交流・検討を行った。RLAの探究活動の質を規定する原問題の選定視点として、興味・関心をひくもの、発展性や多様性、新奇性や意外性があるもの等があげられ、上記の意義・価値以外にも、探究の過程における他者との交流から、問題の深化や新たな気づきが生まれるなど、数学的な概念や知識・技能だけでなく、今後の自分の学びに生かそうとする態度や問題解決能力の資質・能力の育成にも資することが確認された。また、RLAは、今求められている主体的・対話的で深い学びを実現するようなコンピテンシー・ベースのカリキュラム・マネジメントへの寄与や高校に新設予定の「探究基礎」の数学領域のモデルにもなることが期待される。
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