本研究の目的は次の2点である。(1)学習活動における口頭発表の機会を通して、学習者は書くことについてどのような知識を構築するのかを明らかにする。(2)書くことについての知識の構築過程に関する研究方法について整理、検討する。 この目的に対して、学習者にとって複数のテクストの相互関連に関する認識と書くことの生成過程に関する意識化にどのような関係があるかを課題として設定した。課題解決のために、小中学校において3つの授業を計画し、実践を行った。また、授業と学習者の交流活動、書かれた文章を記録した。授業の記録の分析を通して明らかにしたことは以下の通りである。 第1の授業では、図や写真を批判的に読み解き、その発表に基づいて意見文を書く学習を行った。書くことに関わる複数の文脈の間にある矛盾、ならびに引用する情報と学習者が作り出すテクストの境界を話題とした学習が行われることを明らかにした。第2の授業では、プレゼンテーションの機会を通して、学習者が共有を試みた話題を出し合うことが、表現活動に向けた学習者にとっての課題の生成につながることを明らかにした。第3の授業では、高等学校における実践研究の成果をふまえ、カンファレンスを取り入れた書くことの学習を実施した。書かれた文章について学習者が自ら設定した話題に沿って交流を進めることにより、複数のテクストの相互関連に焦点化した書くことの意識化を促すことを意図した授業である。 第1、2の授業については2つの論文にまとめ発表した。また、2回の学会発表を行い、2つの論文にまとめ発表した。第3の授業の分析、ならびに高等学校との連携が実践レベルで十分に行えなかった点が課題である。 研究方法については、上述の研究発表を通して、ディスコース研究に基づくライティングの理論をふまえて学習者の文脈を基盤とした学習過程の研究を具体的に提示した。
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