研究課題/領域番号 |
26381195
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
丹藤 博文 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70523380)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 物語論 / 語り / 授業分析 / メタレベル / 指導過程 |
研究実績の概要 |
平成24年度版中学校国語教科書において、〈語り〉(語り手)がコラムとして説明され、学習課題としても取り上げられた。文学研究および文学教育研究としては、〈語り〉はすでに30年ほども前から、読みの方法として定着しているが、国語の教科書において〈語り〉が問題とされたのは初めてである。しかし、授業を行う教師たちの多くは、〈語り〉についてほとんど知らないのが実態である。 〈語り〉や物語研究は、この100年ほどのあいだに、ロシア・フランス・ドイツ・アメリカ、そして日本においても、追究されてきたテーマであり、〈語り〉・物語研究の領域は広い。また、歴史学・社会学・臨床心理学にも影響を与えてもいる。そこで、文学理論にとどまらず、他の領域も含めて、物語論の現在の傾向や水準について研究した。 そのうえで、物語研究の水準では世界的に認められているフランスの物語論(ナラトロジー)をベースにして、またフランスの中学校国語教科書を購入して、語りを扱う方法について研究した。そして、日本の国語の授業にも利用できる具体的な指導過程試案を作成した。しかし、これは、あくまで「試案」であって、今後実際の授業で検討したり、学会・研究会で発表することによりレベルアップを図られねばならないものである。 文学教材の読みの教育において、〈語り〉を問題とすることは、テクストのメタレベルを読むことであり、子供らの読解力のみならず、最近21世紀型学力として注目されている批判力を養うことにもかかわってくると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画は主に2点であった。 ①物語論・〈語り〉論の基礎的研究:文学理論における物語論・〈語り〉論については、これまでも研究してきたところである。科研費の受託により、対象を歴史学・社会学・臨床心理学まで範囲を広げ、文献を収集し研究することができた。文学理論としてだけでなく、物語の社会的・歴史的・心理的側面について理解を深め、指導過程モデルの構築の参考とした。 ②フランスの国語教科書の研究:教科書図書館等に出張しフランスの国語教科書について知見を得るとともに、実際にフランス中学校国語教科書を購入した。〈語り〉に関する部分について翻訳を委託し、物語分析や〈語り〉の扱い方について研究した。教科書によって取り上げ方は一様でなく、方法にも差異が見られたが、指導過程モデルの参考になった。 上記①・②をもとに、〈語り〉分析のための授業指導過程試案を学術雑誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究で得られた〈語り〉分析のための指導過程試案を実際の授業によって、さらに検討を加えることが次の課題となる。また、実際にフランスの中学校の授業を参観することも視野に含めて研究する。その成果を、学会・研究会等において発表し、汎用性の高いものにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した物品が予定より安価で買えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
フランスの中学校の授業を参観したり、物語分析やフランスの言語教育の事情に詳しい研究者に聞き取りをするため、フランス渡航のための旅費・通訳への謝金等の費用に使用する予定である。また、国内では〈語り〉分析の指導過程をもとにした授業のための授業者との打ち合わせ・授業実践への謝金、授業記録のための経費を予定している。
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