平成24年度中学校国語教科書に「語り」を問う学習課題が設定されたり、コラムとして取り上げられた。義務教育段階においても、読みの方法としての「語り」が本格的に導入されたわけである。しかし、教育現場においては、児童・生徒ばかりでなく、教員にとっても「語り」はほとんど理解されていない。多くの教員は、「聞いたこともない」というのが実態である。そこで、本研究においては、「語り」や物語論が文学理論のみならず哲学・歴史学・社会学・臨床心理学・教育学などの領域において、どうように捉えられているかについて探求したうえで、国語教育における有効性と可能性について明らかにした。そして、フランス系の物語論をベースとして中学校教員と共同で実践的な検討を行い、指導過程として具体的な提案を行った。指導過程立案については、フランス語の授業(コレージュ、リセ)を参観したり、フランスの国語教育の議論を参照したりした。フランスの国語教科書は、方法論の習得と書く・表現するが中心となっていて、日本の国語教育にも必要な視点である。また、小学校・中学校の国語教科書における文学教材について「語り」論をベースとしながら、教材研究として新たな読みを提案した。これらを「報告書」としてまとめ、刊行した。「報告書」は、「語り」の理論を概説し、「語り」による教材研究の方法を示し、「語り」を用いた授業について掲載している。今後、学校現場にも広く浸透するよう出版を計画している。
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