本研究は、社会科学習者に、社会的な利害や意見の対立状況の中で、自己の立場の有利さを最大限保ちつつ相手との合意を形成する能力の育成を狙った。従来の社会科は、客観的合理性を持つ解決による対立の克服をめざした。しかし、現実の多くの社会的合意は、利害当事者の相互作用の結果形成されてきた。この現実に即し、学習者に合意形成技能と社会的自己有能感を育成する必要がある。 開発した授業では、歴史的な対立事例を導入し、合意を目指す交渉をロールプレイゲームとして経験させた。結果として学習者は①多様な合意形成技能を用いて課題に取り組み、②歴史事象の多様な可能性を実感し、③新たな社会の形成者としての自己有能感を獲得した。
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