研究課題/領域番号 |
26381212
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉川 幸男 山口大学, 教育学部, 教授 (40220610)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歴史学習 / 歴史情報 / ナラティヴ / 歴史理解 |
研究実績の概要 |
本年度の課題は、「小中学校の歴史学習諸実践において、歴史への「問い」は実証的な探究とナラティヴとのどのような関わりの中で生まれ、展開してゆくのか」を解明することであった。この課題は、1)国内外の文献における歴史授業記録、実践書、指導書等の調査を通した歴史情報の獲得とその後の探究過程・ナラティヴ形成過程抽出、2)現在小中学校で通常に実施されている歴史授業における上記過程の会話の抽出、3)上記過程に関する分析フレームワークの作成、4)文献及び実地に収集した上記過程のデータ化と解析処理、5)析出される類型の抽出、という各作業段階からなるが、後述する「現在までの達成度」の通り、本年度実施できたのは3)の段階の途中までであり、4)及び5)については、次年度へ持ち越しとなった。 このため、本研究課題による研究成果としては、文献調査と授業収録によるテキストベースの授業記録の収集、整理、及び歴史叙述に関する諸論を参照した分析フレームワークの構築が主なものとなる。一つ注目される点としては、「歴史学習諸実践」とはいっても、いわゆる歴史分野、通史的学習に限らず、社会科の他の分野でも歴史的内容・視点での歴史学習が行われている場合があり、それらの諸実践も含めて収集し得たことは、本研究課題の広がりにとって有意味といえる。しかしながら、この段階では研究発表や論文には至らないため、後述する13には、本研究課題による固有の成果物はない。ただし、13にあげた前年からの継続課題による成果は、本研究課題と非常に密接な関係があり、今後の本研究課題の実施に重要な知見を提供するものといえる。それゆえ、本研究課題全体としては進捗は遅れ気味ではあるものの、今後の推進のためには重要な意味をもつ年度であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究とは別の、最終年度にあたる研究課題があり、本年度はそちらのほうに大きく労力を注いだためである。とはいえ、この最終年度にあたる研究課題は本研究と密接に関連したものであるため、こちらに労力を注ぐことが本研究の進展に無関係であるわけではない。実際、このほうの研究を通して、本研究の今後にとって重要な知見が得られ、本研究のフレームワークの構築に大きな影響を与えたのは確かである。このため、単体としての本研究だけに着目して達成度を評価すれば「やや遅れている」と判断せざるを得ないが、研究課題間の連続性、関連性を巨視的に判断すれば、決して遅れにはならず、むしろ今後のために必要な「有用な遅れ」と見なすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、上記4)及び5)を行うとともに、主に単元レベルにおける歴史情報の獲得とその後の探究過程・ナラティヴ形成過程に関する指導方略の開発を行う。ここでは、上記4)及び5)で集約した諸類型に応じて学習過程の基本モデルを構築し、具体的な取扱題材を設定し、その題材に対応した単元計画を策定し、実験授業を実施する。その際、主に山口大学教育学部の附属学校を活用し、試験的な授業実践を実施して学習環境・学習活動の有効性及び成果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由に関しては、費目別の支出状況をみれば、きわめて明白である。物品費がほぼ計画通りの支出状況であるのに対し、旅費、謝金の支出は皆無で、これがそのまま未使用額となっている。このことはまさに上記の通りの事情が反映している。旅費については上述した本研究とは別の、最終年度にあたる研究課題の旅費を使用することで、本研究課題の旅費を兼ねることができ、新たに本研究に固有の旅費として支出する必要性が生じなかった。謝金については、上記4)及び5)を行うまでには至らなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の使用計画としては、前年度未達成の上記4)及び5)を行うためのテキストデータ分析関係の参考図書、データ処理作業補助関係の人件費、及び教材資料収集や関連学会参加の旅費としての使用を予定している。
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