最終年度は、前年度実施した、日本とカナダとの小学校間で行った俳句による国際交流の授業(合同句会)の有効性を分析・検討し、その結果を論文(「俳句による国際交流の実践的研究」全国大学国語教育学会編『国語科教育』第80集、pp.71-78 査読有、2016年10月)にまとめ発表した。研究成果を簡潔にまとめると、俳句による国際交流のあり方として有用な実践方法を具体的に提示することができたことと、俳句(句会)は学習者同士を繋ぐ魅力的な教材となり得ることが確認できたこととの二点となる。特に、俳句の読みの交流が促進されれば、異文化理解がさらに深まる可能性があることを確認できた点は、俳句による国際交流を発展させていく上で重要な意味をもつ。 また、そうした研究成果をもとに、日本語教育教材として俳句がどのような価値を持つのかを探り、その考察の結果を日本語教育学会のパネルディスカッションにおいて発表した(日本語教育学会秋季全国大会2016年9月、テーマ「人をつくり文化をつなぐ俳句の魅力」、発表題目「俳句の魅力とその可能性―句会を中心として―」)。その内容は、俳句は日本語が未熟でも簡単に作ることができる、句会においては「選ぶー選ばれる」といった関係が生まれる、俳句の鑑賞には読み手の生活や文化が反映されるといった俳句の持つ特性から、日本語の習得、人間関係の形成、異文化理解の促進を図ることができるというものである。 さらに、カナダの小学校で俳句の授業を試みながら、俳句指導の有用性を北米の教育関係者と共有するための方途を探った。
|