本研究の課題は(1)小・中学校の古文学習を通じて身に付けるべき「活用力」を明確化し学習モデルを開発すること、(2)その学習モデルの有効性を小学校・中学校での実践を通じて検証することである。 本年度は、まずこれらの前提となる中学校段階における古文教材の読解モデルを作成した。そこでは、①読みの構えを問う、②本文を問う、③テクスト世界を問う、④書き手と読み手の関係を問う、⑤テクスト世界と現実世界との関係を問うといった5つの問いの水準を設定した。 次に、中学校1年生の定番教材である竹取物語、および中学校2年生の定番教材である平家物語の学習において「活用力」を育成する学習モデルの試案を作成し、それを高知大学教育学部附属中学校において実践した。竹取物語においては「比較」という方法を活用した。具体的には竹取物語(現代語での全文要約)と今昔物語集所収の竹取話(現代語での全文)との作品構造を比較することでその表現性を捉える授業を構想した。また平家物語においては、単元を通じて「物語内容の語られ方に注目し、そこから書き手の思いや作品の問いかけを考える」という「読み方」を習得し(第1次)、活用する(第2次)という方法を用いた。具体的には教科書教材である「扇の的」学習で習得した物語の「読み方」を、補助教材である「敦盛最期」「知章最期」「小宰相身投」「先帝身投」の読みにおいて活用し、平家物語の問いかけにせまるという授業を構想した。
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