本研究の課題は、(1)小・中学校の古文学習を通じて身に付けるべき「活用力」を明確化し学習モデルを開発すること、(2)その学習モデルの有効性を小・中学校での実践を通じて検証することである。 本年度はまず、(1)で述べた「古典学習を通じて身に付けるべき「活用力」の明確化」を行った。そこでは、①PISA型「読解力」や「活用力」の育成を目指した論文や実践報告を収集し分析するとともに、②学習科学における転移研究の知見を用いて、授業において「活用」を促すための方略を検討した。 次に、小学校(低・中・高)および中学校(3年)におけるモデル単元案を作成した。①小学校低学年では、保育園や幼稚園での「ごっこ遊び」「劇あそび」との繋がりを意識し、「劇あそび」を通して昔話を創造的に理解するという単元を構想した。②小学校中学年では、「どうして人々は歌を詠むのか」という問いを切り口として、和歌を生みだす詠者の心的状況を実際の活動を通じて児童に追体験させ、さらに自分なりの表現活動につなげることを目的とした単元を構想した。③小学校高学年では、児童にとっても親しみやすい「浦島太郎」を教材とし、その作品に現れているものの見方を捉え、その見方と現代の絵本にみられる『浦島太郎』との違いを考え文章化する単元を構想した。④中学校3年生では、「自然と人間との重ねあわせ」といった和歌特有の表現技法を追体験し、そこで表出されている作者の心について批評するという単元を構想した。
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