最終年度である本年度は、これまでの年度を踏まえ、以下のような研究を行った。 (1)多くの小中学校で実践可能な「活用型古文授業」の学習モデルを、①「他テキストと関連させて読む」という方法を活用することで、それぞれの教材が持つ特性や価値に気付くといった学習、②①で読み取った教材の特性を具体的な文脈で活用する学習と定めた。 (2)特に中学校における学習モデルを作成し、冊子にまとめた。 (2-1)中学1年:“「物語」の始まりである『竹取物語』が、「物語」という形式でどのような人間の姿を描き出しているのか、羽衣伝承との比較を通じて理解する”といった学習を構想し、その具体的な教材分析案と指導案を提示した。さらにそこでの理解をリアルな文脈で活用するべく、「まだ『物語』を読んだことがない平安時代の女房に『物語の始まり』である『竹取物語』の面白さを伝える」といった言語活動を設定した。 (2-2)中学2年:“戦いの現実そのものを描き出す『平家物語』「扇の的」の特徴を『源平盛衰記』との比較を通じて理解する”といった学習を構想し、その具体的な教材分析案と指導案を提示した。さらにそこでの『平家物語』理解を、補助教材である「敦盛最期」「知章最期」「小宰相身投」「先帝身投」の読みにおいて活用し、『平家物語』の問いかけにせまるという言語活動を設定した。 (2-3)中学3年:“『枕草子』「春はあけぼの」の表現特性を、[1]各季節の構造(「みんながいいと考えるもの」「作者が『これもいい』と考えるもの」を描くという構造)を通じて理解する、または[2]三代集四季部にみられる美意識との比較を通じて理解する”といった学習を構想し、その具体的な教材分析案と指導案を提示した。さらにそこでの理解をリアルな文脈で活用するべく、春夏秋冬それぞれ具体的な言語活動を設定した。
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