研究課題/領域番号 |
26381221
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
藤瀬 泰司 熊本大学, 教育学部, 准教授 (30515599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 批判的教科書活用論 / 中学校社会科 / 授業開発 |
研究実績の概要 |
本年度は、批判的教科書活用論という新しい教科書活用方法の有効性を実験的実証的に吟味・検討した。本年度の研究成果は以下の3点である。 1点目。本学の教育学研究科の科目「社会科教育学実践特論Ⅱ」を利用して、中学校社会科授業を開発したこと。具体的には、本学の附属中学校で使用されている歴史教科書を利用して、「産業革命と欧米諸国」及び「ヨーロッパのアジア侵略」をテーマとする中学校歴史授業を開発した。 2点目。開発した授業の教育的効果を測定するために本学の附属中学校2年生を対象とした実験授業を実施するとともに、授業を受けた生徒に対してアンケート調査を実施した。調査の結果、生徒の約5割から6割が、授業を受けた結果、教科書に対するイメージが変化しており、批判的教科書活用論の有効性を検証することができた。 3点目。以上のような授業開発及び実験授業の結果を全国社会科教育学会(2014年11月1日に愛媛大学で開催)で発表するとともに、『熊本大学教育実践研究』第32号(2015)にまとめ、本年度の研究成果に誰もがアクセスできるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由は、交付申請書に記した平成26年度の研究実施計画の通りに研究を進めることができたからである。同計画では、批判的教科書活用論を活用した大学院生の授業開発及び授業実践を指導し、その成果を学会で発表するとともに研究紀要にまとめることを目標としていた。本年度は、この目標を完全に達成することができた。『熊本大学教育実践研究』第32号(2015)に掲載された論文名を示すと以下の通りである。なお、以下の2本の論文は、院生との共同執筆である。 ①批判的教科書活用論に基づく中学校社会科授業開発(1)-「産業革命と欧米諸国」の場合-(77-88頁) ②批判的教科書活用論に基づく中学校社会科授業開発(2)-「ヨーロッパのアジア侵略」の場合-(89-98頁)
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策の中心は、本研究で提起した新しい教科書活用法を利用した教育実習改革である。教育実習改革を行うにあたっては次の3点に留意して研究を進めていきたい。 1点目。学習指導案改革。教育実習指導の中心は授業案指導である。指導教官は授業案の書き方を実習生に教え、実習生は、自らの授業構想を指導案に具現化し、指導教官はその指導案をみて授業構想に修正・変更を加えていく。そこで、まずは、実習生の教科書活用力を高める指導案の形式を提案したい。 2点目。教育実習指導に係わる大学と附属学校の協同体制を構築すること。これまでは、教育実習は附属学校にすべて任せることが多かった。しかしながら、実践的指導力の向上が叫ばれる今日、附属学校に実習指導を任せきりでは学生の授業力を効果的に向上させることはできない。そこで、実習指導に係わる大学と附属学校の役割分担の明確化や指導体制の合理化を図るプログラムを構築する。 3点目。以上2つの計画に関して、附属学校教員と緊密に連携すること。具体的には、4月に行われる4年次教育実習で上記計画を試行し、その結果を踏まえて、9月の3年次実習で教育実習指導の方法を洗練させていきたい。
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