研究課題/領域番号 |
26381226
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研究機関 | 城西国際大学 |
研究代表者 |
牧野 由理 城西国際大学, 福祉総合学部, 准教授 (80534396)
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研究分担者 |
池内 慈朗 埼玉大学, 教育学部, 教授 (10324138)
長田 謙一 名古屋芸術大学, 美術学部, 教授 (20109151)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 美術教育 / 図画教育史 / ドイツ / 教具 / ミニチュア / 明治期 / 掛図 |
研究実績の概要 |
本研究課題は幼児期の子どもが使用していた視覚教育的〈もの〉の源泉と変容を3つのアプローチによって解明する。平成27年度は下記3つの視点から研究をすすめた。 (1)日本の図画教育史の変遷について、松本幼稚園を対象とした「図画」に関する教具の調査を行い、図画で使用されたと推測される標本(庶物)の実態を明らかにした。またドイツのベルギッシュ・グラートバッハ学校博物館やニュルンベルク玩具博物館等で掛図の調査を行い、明治期に使用された掛図の源泉とドイツからの受容について確認した。それによってドイツの写実的で博物学的な視点で描かれた掛図を使用したり、翻刻していたことを明らかにした。 (2)学校教育で学ぶ数学、理科、言語と異なり、昔より西洋でもインフォーマルな教育でドールハウス・ミニチュアからのロールプレーや箱庭療法的役割などとともに社会性を学ぶ良いツールでもあった。このような「ごっこ遊び」を成立させるには、まず、主体である子どもよりも物理的に小さいことで人物・モノが「ごっこ遊び」に適応できやすくなる。「ごっこ遊び」は「二重表象」と「スケール」を理解していないと成立できないことが明らかになった。 (3)幕末明治期の「視覚の/による」教育を教科書・博覧会・雑誌をもとに調査した。江戸末明治初の博物学関連の書籍をとおして、博物学的な眼の発展過程を追跡した。また明治初めの教科書収集・調査では、美術教科のみならず、むしろ、読本・修身・理科・英語などの芸術以外の諸領域に注目し調査をすすめた。修身・歴史では日本画的表現、英語ではアメリカのリーダーの挿図を基にした挿図、読本では、内容に応じて和・洋使い分けが行われている傾向を確認した。 (1)の研究成果の一部として、平成27年度科学研究費補助金・研究成果公開促進費(学術図書)の助成を受け、風間書房より『明治期の幼稚園における図画教育史研究』を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度にドイツにおける調査を行う予定であったが、諸事情により最終年度に回すこととしたり追加調査が必要となったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に得られた結果を基に、研究者それぞれが下記3つのアプローチによりドイツで調査を行い、日本・ドイツの視覚教育的〈もの〉との比較研究を行う。 (1)明治期にドイツから日本に移入されたと推測される掛図について、ドイツの博物館等において追加調査を行い、掛図の受容とその特質について明らかにする。また掛図の編著者や画家についての調査や図版分析を行うことで、ドイツの視覚教材の特徴を解明し、日本の視覚教材との比較検討を行う。 (2)ミニチュアへの嗜好の時期と「遊び」との関連性を俯瞰し、引き続き「ごっこ遊び」、「二重表象」と「スケール」の理解を中心に幼児期における“ごっこ遊び”などから表象理解、スケール理解について考察する。イメージ・スキーマ、プライマリー・メタファーの発現期を探る。 (3)明治初期小学校を中心とする諸教科書挿図・教育掛図による視覚教育に関するドイツ調査を行う。ドイツ教科書・教育掛図を主とした調査とそれに基づく日独米の関係を解明する。明治期学校外の視覚文化・ものによる子どもの視覚教育推進に関する日独比較研究の推進と併せて、明治期子どもの視覚文化形成・教育の全体構造の仮説的把握をする。 諸事情により計画どおりにすすまない場合は研究代表者・分担者で協力を行うなどして対処する。 以上の研究をまとめ、各自が研究成果を学会等で報告発表する予定である。また本科研全体の総括研究会を行い、報告論集を製作する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度にドイツにおける調査を行う予定であったが、諸事情により最終年度に回すこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度にドイツでの調査を行う予定であり、未使用額はそれに充てることとしたい。
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