研究課題/領域番号 |
26381227
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
嶋田 由美 学習院大学, 文学部, 教授 (60249406)
|
研究分担者 |
小川 容子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20283963)
村尾 忠廣 帝塚山大学, 公私立大学の部局等, その他 (40024046)
水戸 博道 明治学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60219681)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | リズム変容 / 「ぴょんこ」リズム / 等拍 / 「ぴょんこ」止め / 「おべんとう」 |
研究実績の概要 |
平成27年度の研究では、実際の保育現場で、子どもの歌がリズムの面でどのように変容して歌われる傾向にあるのかに着目し、子どもの歌唱の実態の観察を中心として研究を推進した。具体的には「ぴょんこ」、「ぴょんこ」止め、等拍などのリズムの混じった音源を聴きながら旋律を記憶した場合、子どもの歌唱の中でリズムがどのように変容するかを調査した。調査の方法は、上記それぞれのリズムで歌唱した「おべんとう」の歌を例えば、1回目は「ぴょんこ」、2回目は「ぴょんこ」止めの歌唱というように、繰り返して組み合わせた実験刺激の音源を用意し、代表者と分担者が協力を要請した複数の保育園に出向き、まず園児全員に一定回数、聞かせた。その後、クラスの担任が、毎日、研究者が指示をした回数ずつ音源を流し、2週間後に研究者が保育園を再訪し、園児一人一人の歌唱を録音して分析を行った。その結果、等拍、「ぴょんこ」、「ぴょんこ」止めのリズムの混じった実験刺激でも、「ぴょんこ」のリズムにひきずられる傾向にあることが明らかにされた。この結果については第46回日本音楽教育学会において口頭発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究成果を踏まえ、保育園児を対象とした調査ができたが、一方で当初、計画をしていた実験的実証研究の内容、即ち、保育者の指導方法と模範演奏の特徴が子どもの歌の変容にどのように関わるのかという点に関しては、実験のアイディアを具体的に構想する点に留まらざるを得なかった。最終年度にはこの面を重点的に推進する。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、ピアノ伴奏と子どもの歌唱に着目して、保育園における園児の歌唱実態の観察と分析を行う。この観察については「おやつ」という子どもの生活の歌のある種の伴奏の形が、奈良県内で広められているという事実に基づき、同県を中心に行う。また保育者のピアノを用いた指導が子どもの歌唱のリズム変容にどのように作用するかを実験的手法により遂行する予定である。一方、2年間の研究推進の過程で子どもの生活にとって切り離せない遊び歌の中にも、この研究課題と密接に関連する課題があることが明確になった。これは、「じゃんけんホイホイ」という遊び歌に見られる現象である。これまでの調査で、この歌の歌われ方についてはリズムの取り方に言語の地域差があるのではないかと推論するに至った。即ち、関東圏での聴き取り調査では、この歌がシラブル化して歌われ、一方、関西圏での聴き取り調査ではよりモーラ化されたリズムで歌われる傾向があるように観察された。そこで最終年度中に、幼少時にこの歌で遊んだ経験のある大学生を中心として歌唱の録音を行い、まず地域差を明確にする。そしてこの現象を関東圏および関西圏の言語特性との関連において考察し、子どもの歌の伝播の様相についての仮説をたて、今後の研究への示唆を得たいと考える。
|