研究課題/領域番号 |
26381229
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
坪能 由紀子 日本女子大学, 家政学部, 教授 (50027710)
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研究分担者 |
駒 久美子 和洋女子大学, その他部局等, 助教 (10612608)
今田 匡彦 弘前大学, 教育学部, 教授 (30333701)
水戸 博道 明治学院大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60219681)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Inside or Outside? / 音楽教育 / 鑑賞 / 音楽づくり / 音楽理解 / Common-side |
研究実績の概要 |
2015年10月に開催された日本音楽教育学会第46回大会(於:宮崎シーガイア)で,坪能由紀子(研究代表者),今田匡彦(協力者),水戸博道(協力者)は,第44回,45回に引き続き,共同企画IXとしてシンポジウムを行った。テーマは「Inside or Outside? 3」。ここではInside とOutsideの架橋としての「Common-side」という新たな概念を坪能がまず提案し,主に学校教育における音楽の,教材化のための視点とした。水戸はCommon-sideを音楽様式の成立過程から見ることにより,「反復」「問いと答え」といったより普遍的な概念ではなく,一定の音楽様式に共有されるものとし,また今田もOutsideをサプリメントにするためのCommon-Sideについて述べ,Outsideを排除するのではなく,音楽理解に近付くためにはCommon-Sideがこれを助けると述べた。この概念はこの研究全体の新たな提案の一つであり,今後のステップへつながると考えられる。 水戸は2016年3月にはポルトガルへ渡航し,小学校や大学において,音楽づくりのワークショップを何度か行った。日本の子どもたちがよく行ってきた「海」を題材として音楽をつくるという活動主であった。日本では1990頃に「音楽をつくって表現する活動」が小学校に導入され,身のまわりのさまざまなものを使って子どもたち自身が音楽をつくるという活動が盛んに行われた。今日残されたヴィデオなどの記録によると,その頃子どもたちがつくった音楽は,音楽というよりは効果音であり,まさに波の音や風の音,人の足音などを模倣した活動であった。同じ「海」を題材とした場合,ヨーロッパの子どもたちが何をよりどころにして音楽をつくるのか,その一つの例がここに収録できたと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本音楽教育学会の共同企画として,第43回~45回大会(2013~2015年度)までシンポジウムを行い,それについては予定通り順調に推移している。しかし2014年度は研究代表者の坪能が病気になったため,また2015年度は予定していたスケジュールが当地のイースターと重なって学校や大学すべて休校になることが分かったため,急遽渡英を中止した。現在のところ,海外での調査研究は,研究協力者の一人である,水戸博道のポルトガルにおけるワークショップが行われたのみとなっている。
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今後の研究の推進方策 |
2016年7月24日~29日にイギリス,グラスゴーで開催されるISMEにおいて坪能,駒は本研究と関連するポスター発表とワークショップを行う。坪能のワークショップは竹を素材としたフィリピンのトガトンという楽器を用い,反復,問いと答え,ズレなどの音楽構造をもとにしたワークショップ,つまりInsideからのアプローチによる音楽づくりである。ここではInsideからのアプローチの可能性を探るとともに,それが単一の文化の音楽を知ること,あるいはそれを模倣することにとどまらず,音楽における普遍的な構造,あるいはいくつかの文化に共通の構造(Common-Side)と関わりながら有効な教材化につながることを,参会者とともに体験したいと考えている。 2016年9月5日~約1週間は,ロンドンを中心に坪能,駒はワークショップを,水戸は研究者・ミュージシャンへのインタビューを,今田は講演等を行う予定である。プロのミュージシャンと一般の人あるいは子どもとのコラボレーションをもとにした教育プログラムの盛んなイギリスにおいて,InsideとOutsideがどのようにとらえられているのか,あるいは分かりやすいワークショップを実践するための手だてとして,Outsideがどのように取り入れられているのか,それにはどのような背景があるのかを探りたいと考えている。 また2016年10月8日には,日本音楽教育学会第47回大会共同企画において4回目のシンポジウムを行う予定である。ここではどのように現代音楽を中心とする創作の場,または教材化においてInsideとOutsideが取り入れられているのかを,作曲家の近藤譲氏によるレクチャー,現代音楽をレパートリーとするピアニストの大竹紀子氏によるレクチャーコンサート,そして多くの現代音楽を教材化してきている小学校教諭の松下行馬氏による実践報告により,明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者と3人の協力者で,2015年3月にイギリスに調査旅行に行くはずであった。しかし直前に,その時期がイースターと重なり,小学校から大学まで休校であることが分かったため,急遽渡英を中止した。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年9月5日より,上記4人でイギリスに行き,ロンドンを中心に取材を行う予定である。 現地の小学校,音楽団体,大学等でワークショップ,講演,インタビュー等を行うため,現在各団体と交渉中である。
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