本研究は、体系的な対外認識育成をはかる外国史教育方法論のあり方について、実践活動の計画・実践・評価・改善のサイクルを通じて実証的に明らかにする研究である。 平成28年度は、過年度研究活動の補足活動を継続しつつ、時間的・空間的認識の統一的な把握に資する対外認識のための教育実践方法論の解明を進めるための研究に取り組んだ。この課題に関して得られた実績は、以下のとおりである。 1.時間的・空間的認識の統一的把握に資する対外認識の獲得を目指す教育実践のあり方は、教育実践を支える教材の多様性及び博物館等社会教育施設における学外での臨地調査といった学習活動との相互関連を通じて一層効果的に図られる。 2.時間的認識を通じて空間的認識の変容をとらえ、対外認識を獲得する方法として、学習者自身の手で各時代の特色に合わせた史資料とその読解が有効である。このような学習活動を可能にする材料として、教科書は、国民の共通理解と基盤とすべき歴史叙述を主としつつも、叙述より見出しうる学習課題の探究を支える史資料もまた掲載している。さらに、教科書叙述を裏付け、同時に抽出された学習課題を追究する場面において、副読本や資料集に相当する関連史資料もまた活用が求められる。特に、デジタル化された歴史地図は、メディアの活用を通じた対外認識育成にあたり、時間的変遷の探究場面において空間的認識に関する情報と視点を与える。 3.空間的認識を通じて時間的認識の変容をとらえ、対外認識を獲得する方法として、博物館等社会教育施設のプログラム活用や、地域調査を通じた歴史的事象の痕跡の掘り起こしと活用が有効である。学習者にとっての現実である生活空間もまた歴史的変遷に位置づいていることを、自らの生活空間の中で実際に経験することにより、2.では抽象的であった時間的認識と空間的認識の結びつきを、学習者自らの生活の中で統一的に見出すことを可能にする。
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