| 研究課題/領域番号 |
26381233
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| 研究機関 | 明治学院大学 |
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研究代表者 |
新井 哲夫 明治学院大学, 心理学部, 教授 (40222715)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | 造形表現の過渡期としての思春期 / 造形表現の発達 / 描画の危機 / 造形表現のメカニズム / 造形表現に対するメタ認知 |
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| 研究実績の概要 |
平成27年度（２年次）の研究課題は、「表現のメカニズムへの理解を促す題材及び指導法の開発、検討、評価」である。研究代表者は、小学校教科専門科目「図画工作」において、造形表現のメカニズムについて関心を喚起し、理解を深めることを目的とした学修課題の在り方とその指導方法等について検討し、その検討結果を実際の授業において試行することによって、教育的効果の検証を行った。
その結果、〈①対象を概念的（記号的）に捉え、表現することと、そのものの実態に即してリアルに捉え、表現することとは根本的に異なること〉、〈②対象をリアルに捉える場合は、対象の視覚像を機械的に写す（＝模写する）ことと、対象から感じ取った不可視なもの（造形的なよさや美しさ、存在感など）を表し方を工夫して可視化する（＝表現する）こととは、本質的に異なる行為であること〉、〈③造形表現が成り立つためには、造形的な見方やとらえ方が必要であり、表し方にも基本となる方法や様式があること等について理解を促す必要があり、それは自他の表現を振り返ること（＝鑑賞活動や批評活動）によって可能になること〉等が明らかになった。
また研究協力者に対しては、勤務校において思春期における子どもの心理並びに造形表現上の特質をふまえた授業実践を依頼し、全体研究会においてそれぞれの授業実践に関する報告と協議を行った。その結果、次年度に向けての共通の課題とともに、各研究協力者の個別的課題が明らかになった。
平成27年度における研究代表者および研究協力者による研究および実践を通して改めて明らかになったことは、一つ一つの題材について思春期の子どもの特質に配慮した内容や方法の見直しが必要であることはもちろんのこと、それだけではなく、カリキュラム全体を通して、造形表現に対するメタ認知を促す積極的な働きかけが必要であるということである。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度（２年次）の主要研究課題である「表現のメカニズムへの理解を促す題材及び指導法の開発、検討、評価」については、研究代表者が担当する初等科教科専門科目「図画工作」を中心に、造形表現に対するメタ認知を促すための学修課題や指導方法の在り方について検討し、その検討結果を実際の授業おいて試行することによって、教育的効果の検証を行った。指導対象は教員養成を主目的とする学科に在籍する大学１年生であるが、受講生のほぼ９割が造形表現の発達における思春期の課題を十分にクリアできておらず、造形表現に関する経験や能力に限って言えば、平均的な思春期の児童･生徒と大差がなかった。したがって、大学１年生に有効な方法は、思春期の児童･生徒に対しても十分に適用可能であることが示唆された。
研究協力者に実践を依頼するにあたっては、それぞれの勤務校のカリキュラムや児童・生徒の実態をふまえ、日常の指導に支障のない範囲で授業実践を行ってもらうようにした。つまり、外部から新しい題材を持ち込み試行するという形ではなく、通常のカリキュラムや題材に基づいて授業を進めながら、本研究の基本コンセプトに従って思春期を造形表現の過渡期として捉え、その発達的特質を十分に踏まえて授業実践を行うことを依頼した。具体的な留意点として、思春期の心理的特性を踏まえて導入や発想・構想段階の指導を行うことや、表現に当たっては描き方ではなく、ものの見方やとらえ方に留意すること、参考作品の鑑賞や完成作品の相互批評などの鑑賞機会を充実させることによって、表現活動と鑑賞活動とを有機的に関連づけ、活動全体を通じて造形表現に対する児童･生徒のメタ認知を促すようにすることである。実践の成果は、２日間にわたる全体研究会における報告と協議を通じて共有し合い、平成28年度に向けての課題を明らかにした。
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| 今後の研究の推進方策 |
平成28年度の最終的な課題は、これまでの研究成果を報告書にまとめ、公開することである。それに至る具体的な研究課題は、理論的研究としては、造形表現の過渡期としての思春期の美術教育の課題やそれに対応するための基本的な考え方や方法論を明確化することであり、実践的研究としては、授業実践を通して、思春期の子どもの発達的特質をふまえて学習の課題や内容等を見直し、題材設定の在り方や指導方法の改善方策、造形表現に対するメタ認知を促すためのカリキュラムのあり方などについて、検討することである。以上のように理論面と実践面から、造形的な表現活動の過渡期としての思春期の美術教育の方法論を明らかにすることを通して、学校現場における美術教育の実践に寄与することを目指す。
なお、造形表現の過渡期としての思春期に相応しい題材設定の在り方や指導方法の改善方策の検討においては、言語による表現の能力や言語（概念）を用いた論理的思考力が高まる時期における視覚的イメージ操作の課題について配慮することが重要である。また、子どもが日常的に接し、親しんでいるマンガやイラスト、写真・映像などの視覚メディア環境などについても教材として積極的に活用する方向で検討する必要がある。さらに、実際の指導に際しては、相互の関連を欠いた単発的な題材の提示では限界がある。最終的には、児童・生徒が造形や美術の歴史的な文脈に位置づけて、自らの造形表現の意味や意義を理解できるようにする必要がある。そのためには、カリキュラムの編成が重要であり、児童･生徒の学習意欲を喚起するための視点を重視するとともに、学習活動全体を通して、造形表現に対するメタ認知を促し、造形表現に対する理解や愛着が深まるような題材構成を検討する必要がある。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた造形表現の発達に関する図書の発行が遅れたため、11.035円の残金が生じた。
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| 次年度使用額の使用計画 |
11.035円は、平成28年度の物品費（消耗品費）に繰り入れ、造形表現の発達に関する図書の購入等に充てる。
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