| 研究課題/領域番号 |
26381234
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| 研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
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研究代表者 |
加藤 晴子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (10454290)
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| 研究分担者 |
加藤 内藏進 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90191981)
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| 研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| キーワード | 歌の生成 / 異文化理解 / 自然環境 / 指導法開発 / 教科の連携 |
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| 研究実績の概要 |
本研究は，児童生徒が，国際化・多様化が進む社会に生きていく力を身に付けていく上で必要な「ものを総合的に捉える眼・見る眼」を養うために，小学校，中学校を中心に，文化理解を視点とした学際的な学習の指導方法の開発を行うことを目的としている。
本年度は，これまでフィールド調査で収集してきた楽譜等の資料の整理を進めると共に，自然発生的な音楽である民謡と共に芸術作品である歌曲についても，自然や人々の生活との関わりを考察した。また，気象・気候系に関しては，微妙な季節感の違いに注目して，日本だけでなくヨーロッパに関しても詳しく解析した。例えばドイツ付近の冬には日々の気温の大きな変動に伴い極端な低温日も時々出現し，そのような状況が解消するのが「夏の始まりとしての春」と認識されうる点を気候学的にも確認出来た。
学際的分析によって得られた結果を素材に加えながら，大学や高校，中学での学際授業実践での成果や課題を論文として取りまとめた。冬から春，および夏の季節に注目した授業実践を大学生を対象に行い，その分析・考察を行った。その結果，地域独特の気候が人々の生活に与える影響について，歌，自然環境，美術の3点の関連を通して意識できる学習のプログラムの可能性を見出すことができた。
また，民謡や歌曲について，歌われている地域の比較も交えながら分析・考察を進め，歌詞に表現されている気候や風土について整理した上で，気候のサイクルの特徴や地域間の違いがどのように歌の表現に表れているのかについても検討を進めた。
以上のように，歌の生成や表現と自然環境との関わりを切り口に文化理解を視点とした学際的な学習の可能性が明らかになると共に，指導方法の開発の具体化，その発展に向けた資料を得ることができた。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度には，H26年度までの活動を踏まえ更なる資料の収集を行った。そこでは指導に必要な素材を補強することができたと共に，新たな指導のアイデアも複数得ることができた。それらをもとに，文化理解のための学際的学習の指導方法の開発において，これまで実践してきた内容を発展させながら，指導の具体化を図るための資料の吟味，精選，整理と教材化を行った。
例えば，東アジアの「秋から冬」と「冬から春」への季節進行の非対称性に関する知見を更に深めるとともに，ヨーロッパと東アジアの季節サイクル全体を比較気候学的に吟味した。その結果，日々のアイスランド低気圧の活動にも関連した大きな気温の変動の冬と春との違いなどから，ドイツ付近の「夏と冬との戦い」や「冬の追い出し」という季節感に通じる季節進行の特徴の一端を明らかにし，歌の生成と自然環境との関わり，文化の多様な側面を浮かび上がらせることに，ある程度成功している。
また，文化理解を視点とした学際的な学習の指導方法の開発の具体化については，小学校・中学校の要旨を目指す大学生（教員養成課程）を対象として学際的な研究学習の授業実践を複数行った。前年度に実施した授業実践も併せて分析・考察を行い，その一部を論文としてまとめて発表した。そこから今後新たに提案する授業の検討への重要な手がかりを得ている。
H27年度は中間年度であり，これまで行ってきた研究を土台として内容を発展させることに力をいれた。そのために必要な，音楽文化の背景から歌の生成，表現を捉えること，また地域間の比較のための詳細な資料の収集を行い，それをもとに実践を試みている。
これらを通して，文化理解のための，歌の生成や表現と自然環境との関わりを切り口とした学際的な学習の可能性，方向性についても方向性が明確になってきた。研究成果を，日本音楽表現学会，日本音楽教育学会等，複数の学会で発表している。
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| 今後の研究の推進方策 |
H28年度には，H26年度，H27年度に行ってきたものに加えて，更なる調査・資料収集を行う。調査にあたっては，視点をより絞り込むと共に，これまで目をあまり向けていない部門についても見ていきたい。歌の生成と表現と自然環境の関わりについて，考察を地域間の比較へと繋げ，発展させるために，知見の蓄積を重ねていく。例えば，日本とドイツのように大きく異なる地域でありながら類似した季節感や季節の行事があるものを取り上げ，同一地域の中での比較と共に，異なる地域についても，季節感を視点としてより深い比較，考察を進める。また，ここで得られた季節感の違いをもとに，季節感を感じさせる気候の要素，その特徴に注目して，さらに広い範囲での比較も行っていく。例えば，日射であるならば，オランダや北欧の諸国についても音楽や文化の背景に目を向けていくことで，これまでに得られた結果について補填しうるものが得られるのではないかと考えている。
これらの知見を整理，精選して，教材の具体化を図り，小学校中学校で活用できるような素材を提供するという形で文化理解の学習のための指導方法の開発を進める。学習プログラムを構築し，実践を行い，その分析を行う。その際に，小学校，中学校を対象とした指導と，高等学校，大学の教員養成課程での指導法への発展も視野に入れて考察を進めて行きたい。今後の教育界を担っていく学生の資質向上も図りたい。また，教育現場との交流を通して学習プログラムについて意見・助言を求め，教育現場にダイレクトに生かしうるものという点から指導内容を精選，検討し，実践に応用しうるものを種々の角度から提示する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に「次年度使用額」が80万円ほど生じた。これは，H27年度に研究を進めた結果，成果をよりまとまった形にした上でH28年度初め頃にヨーロッパでの国際学会でその一部を発表してレビューを受けるとともに，気象・気候や自然環境，美術等も含めた研究情報や資料のさらなる収集を行うこと，更に国内外の別の地域・季節を含めた資料収集も行うこと，また，それらの分析等も含めた諸経費に使用することにより，研究全体がより効率的に進展していくと判断したためである。
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| 次年度使用額の使用計画 |
H28年度は，全体的に，当初計画にほぼ従って，研究資料の入手やその分析，知見の体系化および教材開発，授業実践，実践の分析のための経費（消耗品，旅費，謝金），成果発表や打ち合わせ等の旅費，等と共に，研究の成果をまとめた冊子を作成するための費用に，研究経費を使用する予定である。
なお，H27年度の繰越分は，主に，H27年度の成果の一部の発表や資料・研究情報の収集，及び，更なる追加的な研究情報の収集等の出張経費に使用する。また，H27年度に収集した資料の整理の補助や，これまでの成果を踏まえた研究の更なる進展のために，専門家からの知見の提供を受けるための謝金にも使用する。
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