本研究では、期間を延長して研究活動に取り組んだ。完成年度となった平成29年度には、これまの活動成果を踏まえ、資料の詳細な整理と分析を重ね、音楽と気象・気候を連携させた学際的なアプローチについてさらに踏み込んだ考察を行うことができた。その結果、分析、考察したものの中から学習の素材として活用しうるものを精選して教材化を行い、それを用いて学際的学習の具体例をまとめあげて提示することができた。 例えば、ドイツ付近の「冬の追い出し」の行事ファスナハトや、北欧の夏至祭といった伝統的な季節の行事を取り上げながら、季節サイクルについて比較気候学的に吟味し、各地域の季節の特性の一旦をより顕著に捉え、そこから歌の生成や季節の伝統的な行事と自然環境との関わり、地域の文化の特性を浮かび上がらせた。これらを教材化し、学校教育での文化理解の学習の意義や方向性の検討を含めて学際的な学習の実践を提示した。 実践では、3つの柱「当該の地域の季節」「人々のくらし」「歌や行事の音楽に表現された人々の思い」をもとに立体的な組み立てを行った点に独創性がある。民謡や伝承歌の歌詞に歌われている季節の事象や季節の伝統的な行事にみる音や音楽、所作が象徴している例に注目し、地域固有の季節進行の一面を捉えることができた。また、季節進行をテーマとして音楽作品を作る活動を通して、自分たちにとって季節や季節進行がどのような存在なのかを捉えると同時に、異なる環境に住む人々のくらしにも思いをはせ、異文化理解に繋がる「ものを見る眼」を養う重要性についても学習者の意識を高めることができた。 これらの研究成果を各種学会で発表し、広く発信を行った。ここで今後に向けた展望を得ることができ、独創性を生かしながら社会に貢献しうる研究を継続していく道筋が明らかになった。
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