研究課題/領域番号 |
26381242
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研究機関 | 奈良学園大学 |
研究代表者 |
鎌田 首治朗 奈良学園大学, 人間教育学部, 教授 (40599354)
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研究分担者 |
高木 悠哉 奈良学園大学, 人間教育学部, 講師 (40572350)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国語科授業改善 / 単元計画モデル / 授業モデル |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,小学校・読むことの単元計画作成チェックリスト(鎌田,2013)の有効性を,教員,および児童に及ぼす影響を検討することで明らかにすることである。本年度前半は,小学校現場の教員にヒアリングを重ね,国語科単元作成における困りごとを質的データとして収集した。それらデータ分析と理論的考察を踏まえ,チェックリストの項目を作成した。後半は,作成されたチェックリスト(CL)の有効性を検討するため,私立小学校1校の教員,児童を対象に調査を行った。 小学校3年生の2クラス,児童70名(男子25名,女子45名)とそれぞれのクラス担任教員(女性2名)を参加者とした。調査は,「物語を読んで,しょうかいしよう/モチモチの木(斉藤隆介作)」(光村図書・三年)の単元学習指導で行った。2クラスは,1つが「CL」を使用せず指導書を基に単元指導を展開した担任(以下,「無担任」)のクラス(以下,「無クラス」)であり,1つが「CL」を使用して単元設計と指導を展開した担任(以下,「有担任」)のクラス(以下,「有クラス」)である。 児童の学習意欲,動機づけ,クラス担任への印象を質問紙で調査した。また,単元開始の1週間前に,「有担任」には「CL」の使用法を説明した。児童による調査用紙の記入方法,留意点等については担任2名に同じ内容を同時に説明した。単元開始前後に,学習意欲,動機づけについてはクラス担任の下で行い,教師への印象については2名の教師が交代をした上で,児童は回答をした。単元終了後,教師はプロフィール,指導力の認知,単元終了後の自由記述形式の感想を記入した。 結果として,①「無クラス」は単元前後で自己評価は異ならないが,「有クラス」では単元前と比較して単元後の自己評価が高かったこと,②「無クラス」は単元前後で内発的動機づけが異ならなかったが,「有クラス」では単元後に一部の内発的動機づけが高まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次に申請書で計画していた,チェックリストの作成は予定通り終了している。また,そのチェックリストを用いて実証的研究を行い,教員がチェックリストを使用して単元計画を作成することで,児童の心理的な側面である動機づけが,チェックリストを使用していない教員のクラスより高まることが,統計的に示されている。ただし,教室内で発生している,単元の進行以外の様々な要因については検討しておらず,次年度に持ち越している。また,教員側のチェックリスト使用の有無が,その後の単元作成,および教室運営,自己概念等に及ぼす影響は,同じく次年度に持ち越す予定である。また,1年次の研究は論文としてまとめられ,次年度に査読付き論文が掲載されることが決定している。 総じて,1年次に予定していたチェックリスト作成を終え,その有効性が,一部示されている。また,その結果も,論文として公的に認められている。したがって,本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から,小学校国語科,読むことの単元作成チェックリストは,ある程度の妥当性を持ち,その有効性も小学校をフィールドとして統計的に認められた。ただし,その有効性は児童の心理的な動機づけの1部に限定された。つまり,チェックリスト使用が教員にどのような効果を及ぼすかについては,検討がまた行われていない。 したがって,次年度は,チェックリスト使用前後×チェックリスト使用有無の研究計画を用い,教員の単元作成に対する心的イメージが,どのように変容するか,またその変容は今後の教員としての活動に有効であるのかを,特定の教員小数の継続的面接を用いて明らかにする。手法としてはPAC分析を利用し,1年間に1教員6回の面接を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度,調査において謝金を計上していた。しかし,データ分析等を研究責任者,分担者で行ったため,それら謝金が発生しなかった。また,本年度フィールドとした小学校と強固な協力体制を築き,全面的なサポートがなされたため,それらに想定していた謝金が発生しなかったことが,次年度使用額が生じた主要な原因である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は,教員数名に面接を1年間,継続的に行っていくため,必然的に当初計画以上の謝金が発生するものと考え,次年度使用額はその50%を謝金として使用していく。また,次年度に査読付き論文の掲載が決定しているため,それらの別刷およびwebでの情報公開に,残り50%を使用していく計画である。
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