フランスの学校教育における文学遺産について重要な発見をした。中等教育の民主化に大きく貢献した1938年改革から「統一コレージュ」と呼ばれる改革が施行される1977年までに使用された前期中等教育国語の教科書では,「17世紀から今日に至る散文及び韻文の抜粋」という項目が,他の学習項目に比べて特段多くの紙数を占めているのである。この事実は,文学的教養の涵養に特化した中等教育という定説に再考を迫る。 一方,2009年以降のカリキュラムに準拠した教科書は,上記の期間に比して文学教育を重視した構である。これは社会の安定のために,共通の教養を市民に普及させるべき,という社会的要求が働いているためと考えられる。
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