本研究では,イノベーターの育成を目指した新しい数学教育指導法に関する研究を行う。この研究は,数学が本来持っている自由性という根本的な特性を教育的指導法に活かすことを目指すものである。申請者は,特に,新しい発想力の育成という視点が日本の教育全般に不足していると考えている。その理由については,研究の背景でも述べるが,高校生の科学コンテスト世界大会で日本があまり評価されていない点からも伺える。申請者は,イノベーターの育成のための具体的な方策として,数学における未解決問題を教材とする案を持っている。未解決問題は,素人が分かるレベルにおいても数多い。提案理由は,未解決問題を解くという方向にチャレンジさせるというところでなく,未解決問題の問題としての魅力や意味を感じ取り,その問題をヒントに,例えば,まだだれも提示していないオリジナルで魅力ある問題を自由に発想するといった,学生自らが主体的にイメージした新しい問題や,理論へと発展させることができるものとして捉えている。本研究では,具体的な未解決問題からどのような発想や思考が得られるか,その詳細なデータの分析から,一般の数学の授業でも扱えるイノベーション開発基礎教材としての方向性を提示したい。本研究で明らかにすることは以下である。(1) どのような未解決問題がどのようなタイプの学生に,発想力という点でどのような影響を与えたか。(2) 未解決問題をヒントに学生が考えた新しい数学的視点や発想は,その後どのように展開したか。(3) 発想力のある学生と知識力のある学生が混在するチームによる学習から,どのような効果が得られたか。(4) (1)~(3)までの分析をもとに,未解決問題を学生に紹介するときの問いかけの方法の具体的提示。(5) さらに,新しい数学的視点や発想を展開させるための学生への具体的指導法の提示。
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