本研究の目的は、国語科を中心とした各教科等の学習において機能する読解力を育成するためのカリキュラムと授業実践モデルを開発することである。 最終年度の成果として、これまでの読解力育成上の課題を克服する国語科の授業構想のステップと授業実践のモデルを作成した。具体的には、①「各教科等の学習に機能する読解力」の観点から、当該単元で付けたい読む能力を明確にすること、②その能力を育成するための言語活動と必要となるテキストを選定し、③子供にとっての課題解決の過程となる単元の学習過程を構想するという授業構想のステップにより、教材を目的なく読み取らせてしまいがちであるという課題を克服できることを解明した。またその実践モデルについては、型にはまった実践のためのモデルではないかという誤解を避けるため、事例そのものを普及させることを目的とするのではなく、そのモデルがもつ意味や効果を具体的に解説し理解を広げることに留意した。 研究全体を通した成果としては、大きく次の3点があげられる。まず、ベルリン・ブランデンブルグ州立学校・メディア研究所において聞き取り調査を行い、ベルリン市が展開する各教科等との連携を図る読解力育成カリキュラムの特徴を我が国で初めて明らかにした。このカリキュラムは大きく授業での読書推進、学校全体での読書推進、地域や保護者等との連携協力体制づくりの観点から構成されており、我が国の教育課程の改善にも資するものと考える。次に、優れた国語授業実践者等からなるワーキンググループを組織し、実践事例の集積と課題把握、改善を図る実践の試行とその整理を行った。ワーキンググループにおいては、現在の学校の実情を十分に把握し、その実情を踏まえたカリキュラムや実践モデルを提示すべく継続的に検討を行った。更に上述のようなカリキュラムと実践モデルにまとめた。
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