研究課題/領域番号 |
26381247
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
千葉 胤久 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90333765)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 道徳教育 / 内容項目 / 哲学 / 倫理学 |
研究実績の概要 |
『中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』「第3章 道徳科の内容」において示されている内容項目のうち、「公正、公平、社会正義」、「社会参画、公共の精神」、「遵法精神、公徳心」、「生命の尊さ」を重点的に取り上げて、それらの内容項目の意味内容を、関連する哲学・倫理学的諸見解を参考にしつつ明確化する作業を行った。 「公正、公平、社会正義」に関しては、平等が正義の要件になるにしても、何でも一律に等しく扱うことが正義に適った扱いになるわけではなく、場合によっては、不当な差別を容認することにならないように注意しながらではあるが、等しくなく扱うことも正義に適った公平な扱いになりうることにも言及する必要があることを確認した。 「社会参画、公共の精神」に関しては、公共哲学の議論を参照しつつ意味内容の吟味を行い、「社会参画、公共の精神」は、私的な領域に閉じこもることなく、多様な他者と共に生きることを目指す姿勢として具体化されるべきものであって、決して滅私奉公を要求するものであってはならないということが強調されるべきであることを確認することができた。 「遵法精神、公徳心」に関しては、法に従うことの意味を自覚的に理解させることなしに、ただ法に従うことだけを要求しても、遵法精神の指導を行ったことにはならないのであり、「なぜ法には従うべきなのか」ということを繰り返し問うことが重要であるということを確認した。 「生命の尊さ」に関しては、自己有能感という意味での自己肯定感だけではなく、自らの存在をそのままに認めることができるという意味での自己肯定感を育てることが自己の「生命の尊さ」の自覚と承認につながるということを確認した。さらに、自己存在の肯定としての自己肯定感を有することを可能にするものとしての他者の存在に気づくことが、他者の「生命の尊さ」に気づき、他者の生の尊重につながることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度取り上げる予定であった内容項目に関しては、解説集に記載すべき主要な内容を検討・吟味することができた。特に「公平、公正、社会正義」に関しては、現在投稿中のものではあるが、道徳教育において「正義」を主題として取り扱う際の留意点について考察した論文を作成することができた。 また、これら研究成果の一部は、教職大学院における道徳教育関連の授業や学部における倫理学関連の授業等においても活用することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成28年度は、前半においては、前年度までに重点的に取り上げた内容項目に関する考察をさらに深め、そのことを通じて、解説集に記載する内容をより詳細なものにしていくことにしたい。 後半においては、これまでに十分に内容の検討を行うことのできなかった内容項目に関して、その概念内容の明確化を目指す作業を行い、解説集に記載すべき内容の概要をまとめていくことにする。その際、『中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編』における「内容項目の指導の観点」の記述を参照しつつ、各内容項目の内容の検討・吟味を行い、哲学・倫理学的な観点から補足すべき事項を指摘するという方法で記述すべき内容の明確化をはかっていきたい。
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