研究課題/領域番号 |
26381251
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
伊藤 孝 茨城大学, 教育学部, 教授 (10272098)
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研究分担者 |
大辻 永 東洋大学, 理工学部, 教授 (20272099)
丸山 広人 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (50418620)
橋浦 洋志 茨城大学, 教育学部, 特任教授 (60114021)
片口 直樹 茨城大学, 教育学部, 准教授 (60549864)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 野外観察 / 写生 / 富士山 / 地形 / 地質 / 浮世絵 / 絵画 / 文学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,自然科学・美術・文学的な観察・鑑賞の対象であり続け,また日本のシンボルとも言える富士山を対象として,浮世絵や和歌・俳句の鑑賞,写生の実施・俳句作り,立体地形モデルの作成と観察,巨大床地図の観察,地形実験,現地観察を有機的に配置した多面的実践学習プログラムを構築し,その実践を行うこと,それによる教科間相互作用を測ることにある。これを踏まえ,3年目にあたる平成28年度には以下の点を主に実施した。 1)富士山をフィールドとした地学野外実習の実施 2)多面的学習プログラムのノウハウの他フィールドでの応用 まず,1)に関しては,平成26年度の地学野外実習に引き続き,本科研費期間,二回目の実施となった。前回と比較し,a)引率者として新たに教育心理の専門家を加え,教育的効果の測定を行った点,b)事前事後指導において,富士山をモチーフとした絵画の鑑賞を取り入れた点,c)下見の成果を取り入れ,富士山南西部も観察地点に加え,結果,富士山をぐるりと一周,様々な角度から見ることができた点,で大きく異なる。これら新しい試みの成果は,テキストマイニングの手法を用いて現在解析中である。2)については,富士山で実施した内容の簡易版を筑波山をフィールドとして実施した。参加した学生は美術を専門とする学生であり,自然科学的な学びが芸術的な表現にどのように反映されるか,現在検討中である。またフィールドの違いを越えた実践手法の一般化が可能であるか,今後の検討課題である。これら研究成果は,平成29年度中の論文化を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで,この科研費研究期間前である平成23年度に加え,平成26年度,平成28年度の計三回分,富士山をフィールドとした地学野外実習を実施することができた。初回の平成23年度は純粋に「地学」の野外実習であるが,その後,平成26年度・平成28年度については,地学が主体ではあるが,美術・文学・日本史等に関する要素も取り入れた分野横断的かつ多面的な内容となっている。平成23年度分,平成26年度分,それぞれ単独の試みは,伊藤ほか(2012),伊藤ほか(2015)として公表済みであるが,現在,三回の試みを総括した論文を執筆中である。その論文では,三回分の学生レポートを素材として,学びの質をテキストマイニングの手法を用い定量的に議論する予定である。また,文学の観点から実施した事後指導の内容は,橋浦(2017)として公表済みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本研究の最終年度にあたり,これまでの研究成果をまとめる年となる。本研究の総括的な成果は,『地学教育』,およびJournal of Geoscience Educationへ投稿予定である。また,American Geophysical Union Fall Meeting(12/11~12/15)等で発表し,海外へもその成果を発信していく。加えて,特に美術表現に特化した教育的効果をまとめた論文,全体をまとめた論文等,執筆を計画している。 さらに,これらのまとめ・公表の作業の過程で浮かび上がった課題やアイディアをもとに新たな教育プログラムを立案・公表する予定である。この新教育プログラムの立案のため,富士山とその周辺,美術館,文学館,博物館等を訪れ,現場で確認の作業を行う。ここで完成予定の教育プログラムは本科研費研究の総括となるが,これについては,平成31年度の地学野外実習として富士山をフィールドに教育実践を行い,その効果を定量的・定性的に評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた最も大きな要因は,研究代表者がすでに連絡済みの事情により当初計画と比較し,研究時間の確保が叶わなかったためである。そのため,データの解析が進まず,予定していた海外で開催される国際学会での発表,論文公表ができなかった。また,分担者が立ち上がったばかりの教職大学院での教育活動に集中せざるを得なかったため,また別の分担者は職場が変わり教育・研究体制をゼロから立ち上げる必要に迫られたため等々,構成メンバー全体として本研究にさける時間が当初予定を大幅に下回ってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年6月および12月には,富士山をフィールドとした教育プログラムをさらに改良するため,野外での確認作業を行う(国内旅費)。これまでのデータの解析を継続するため,年間を通し,消耗品・アルバイト代等,使用していく。成果の公表に関しては,5月のJpGU(国内旅費,参加登録料),12月のAGU(海外旅費,参加登録料)等の各種学会での発表,専門誌への論文の投稿(英文校正代,投稿費)を予定している。
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