本研究では,認知的スキル研究などにおける成果を基盤とした上で,教師に求められるジェネリック・スキルを明らかにすることを目的としている。そして,その結果をもとに,教員養成において,それらを育成する教育方法,カリキュラム等を開発することを目指している。 平成27年度には,前年度に国立大学教育学部4年生83名を対象として行った無記名式質問紙調査の結果をもとに,教員採用試験の受験やその結果,教員適性の自覚,教員志望の強さ,自己管理スキル,社会的スキル,一般性自己効力感などの関連を分析した。分析に用いたデータは教員採用試験終了後にとったものなので,説明変数が教員採用試験結果等の影響を受けている可能性が高く,また,ケースにも偏りがあるものの,教員採用試験の結果とジェネリック・スキルとの間には関連を見られた。その結果を研究集会において発表し,他の教員養成機関の研究者と議論を行った。 また,新たなコホート研究につなげるために,教員採用試験受験前の学生にジェネリック・スキル等に関する記名式調査を実施した(これには学部内の倫理審査を受けている)。これは,平成28年度,平成29年度教員採用試験の結果と対応させて分析が行われることになる。ジェネリック・スキルのみに関する分析では,前年の学生と大きな差異はないという結果を得ている。 さらに,教員養成においてジェネリック・スキルが注目されるのは海外においても同様であるため,他国の教員養成大学の教員にインタビュー調査を行った。その結果,ジェネリック・スキルが強調されるのは同じにしても,どのスキルが強調されるのかに関しては差異があることが明らかになった。また,教員を目指す海外の大学生にも調査を実施しており,その結果は分析中である。
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