本研究は[絵画・以降]というべきモダニズム美術の終焉以降の時代における美術教育のディシプリンを、モダニズム絵画の歴史を批判的に遡行することに探り、そのディシプリンに基づくカリキュラムを開発しようとするものある。本研究代表者と協力者たちは先行する研究プロジェクトとして、2012年度において、F・ステラ(Frank Stella)、G・リヒター(Gerhart Richeter)、2013年度においてはE・ケリー(Ellesworth Kelly)、B・マーデン(Brice Marden)の、それぞれの絵画に関する題材開発を行ってきた。それらは、20世紀後半におけるモダニズム絵画の最終的なかたち(形式)についての探求といえるだろう。本研究プロジェクトは、それらを踏まえ、2014年度にP・モンドリアン(Piet Mondorian)、2015年度にH・マティス(Henri Mattise)等の絵画に関する題材開発を行った。この一連の絵画題材群はシークェンスを形成し、ミニマル絵画からマティスへと遡行する絵画教育のカリキュラムとして機能することが期待されるものである。 また、カリキュラムを貫く絵画の基本的ディシプリンとして、[図と地]の構造と、[ドローイングとペインティング]という二組の概念を抽出した。これらの概念を通じて、上記の絵画教育カリキュラムは、単なる様式の歴史的羅列ではなく、絵画というメディアの本質に根ざす価値創造の方法として美術教育の基盤に位置づけられることが可能になる。 本研究プロジェクトは、研究期間中の美術科教育学会大会(2014年度上越大会、2015年度大阪大会、2016年度静岡大会)において研究代表者と協力者3-4名によって口頭発表における成果公表を行ってきた。また各題材とカリキュラムの実践による検証と改善を行い、2016年度末に成果報告の発刊を行った。
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