研究課題/領域番号 |
26381272
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
伊藤 裕康 香川大学, 教育学部, 教授 (70279074)
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研究分担者 |
伊藤 貴啓 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10223158)
植田 和也 香川大学, 教育学部, 准教授 (20709274)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 附属学校と連携した教員の学び続ける場の設定 / 社会科と道徳教育 / 卒業生への支援 / 実践的指導力 / 「新たな学び」を支えられる指導力 / 水を基軸としたESD授業開発 / 学び続ける教員 |
研究実績の概要 |
教員大量採用時代ではあるが,学校の小規模化で若年教員を指導する余裕が現場にない。社会や保護者が若年教員の未熟さに不寛容となり成長も待てない。急激な社会変化による高度化・複雑化する諸課題への対応も求められ,新任者は実践的指導力に加え「新たな学び」を支える指導力も求められる。本研究は,「新たな学び」を支えられる指導力の修得が可能な社会科教員養成プログラム開発を最終目的とする。2015年度の研究業績は以下の通り。 1.教職志望の強い学生への教員採用試験に向けての支援活動を省察し,卒業後のフォローアップが課題であることが分かった(谷本・毛利・植田他2016)。 2.1の課題も踏まえ,香川大学教育学部附属坂出中学校を会場に,地域の現場教員,院生や学部生も参加した「学び続ける教員」が集う場の構築を図り,「新たな学び」を支える実践的指導力のある教員の養成方略に関わる基礎的知見を得る試みを開始した。同試みは卒業後のフォローアップとなり,卒業生へのアフターケアにもなった。 3.社会科と深い関係にある道徳の教科化で,社会科教員は道徳教育にも責任を持つことがより求められる。道徳教育を射程に入れた学びが「新たな学び」に繋がると捉え,社会科と接続する道徳教育のあり方を「ESDとしての道徳教育」の観点から探り,「すでにあるもの」としての捉えから「つくりだすもの」でもあるという捉えへの転換の大切さを明らかにした(伊藤裕2015)。また,実践的指導力の一つとして積極的生徒指導が出来ることとを考え,道徳教育の充実が対処療法的生徒指導でない積極的生徒指導を生むことを明らかにした(七篠・植田2016)。 4.「新たな学び」に繋がる諸課題の一つとして「水」に着目し,水を基軸としたESD授業を開発し,水を基軸とすることがESD授業を成立させることを明らかにした(伊藤裕2016)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画立案以降,道徳の教科化問題や教科専門と教科教育とを架橋する教員養成の在り方が求められるようになった。これらの問題に目配りする必要性を感じ,初年度の2014年度より当初の計画を拡張して手探りで進めて来ている。このことは,最近の学校教育においてコンテンツベースからコンピテンシーベースへのシフトが言われる中にあっても,内容教科としての社会科の特性を踏まえれば必要なことであると考えている。 さらに,2015年度は,社会科研究室卒業生が2016年度に開催される四国ブロック規模の社会科研究大会での公開授業者となることが決まり,それへの指導・支援が喫緊の課題となった。卒業後のフォローアップは本研究と直結するものでもあるし,「新たな学び」を支えられる指導力の修得には,「学び続ける教員」となることが必要とも考え,「学び続ける教員」が集う場の構築を図ることを最優先した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 2015年度に大幅改組した香川大学教育学部学校教員養成課程に入学した学生のコースが確定した2016年度であるので,2015年度の早期に実施する予定であった社会科教師をめざす教職志望学生のナラティブを聴く試みを実施する。 2.2014年度に実施して効果が認められた,「新たな学び」に繋がると考えられる授業を継続開発する教員の語りを聴く会を,2015年度構築した「学び続ける教員」が集う場で実施し,教員養成におけるその有効性を検証し,社会科教員養成カリキュラムへの組み込みが可能か考察する。さらに,この会で登壇した教員への半構造化インタビューによる教員のライフヒストリー研究を進め,どのようなことが教員の力量形成に役立っているかを明らかにする。 3.仮説の設定が十分に出来ず実施できなかった地域の社会科研究会へのアンケート調査や聴き取り調査を行い,新任の社会科教員に必要な実践的指導力の内実を明確化する作業を進める。 4.「新たな学び」に繋がる授業を支えられる社会科教員の資質・能力と関わる先行研究・授業実践を収集し,新たな学びを支えられる社会科教員の資質能力に関わる知見を得る。 5. 2015年度に「新たな学び」に繋がる授業と関わる先行研究・実践を収集・分析し,その成果と課題は明らかにして,「新たな学び」に繋がる授業開発の知見を得た上で,研究代表者と研究分担者とで社会科教育専攻の学部生でも授業開発可能な水や防災などを基軸としたESD授業を設計する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は,社会科研究会のブロック大会の公開授業者となった社会科研究室卒業生を指導・支援する場にもなる「学び続ける教員」が集う場の構築と、「新たな学び」を支えられる指導力の内実を明らかにするための仮説設定に主眼を置いて研究活動を進めた結果,計画してあった社会科教師をめざす教職志望学生のナラティブを聴く試みと、新任の社会科教員に必要な実践的指導力の内実を明確化するための地域の社会科研究会へのアンケート調査や聴き取り調査が実施できなかったことによっている。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度に生じた次年度使用額は,教職志望学生のナラティブを聴く試み(設備備品費,テープ起こし謝金),地域の社会科研究会へのアンケート調査や聴き取り調査(調査旅費,通信費,アンケート印刷代,テープ起こし謝金)に当てる。 2015年度予定の助成金は,「新たな学び」に繋がると考えられる授業を継続開発する教員の語りを聴く会(講師謝金,講師旅費,テープ起こし謝金),教員のライフヒストリー研究(図書資料費),「新たな学び」に繋がる授業を支えられる社会科教員の資質・能力と関わる先行研究・授業実践の収集(図書資料費,資料複写費,通信費),「新たな学び」に繋がる授業と関わる先行研究・実践の収集・分析(図書資料費,資料複写費,通信費),研究代表者と研究分担者による社会科教育専攻学部生でも授業開発可能な水や防災などを基軸としたESD授業設計(研究打ち合わせ旅費)に使用する。
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