研究課題/領域番号 |
26381283
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
藤森 千尋 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (10707657)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自律的学習者 / メタ認知 / メタ言語能力 / 自己モニタリング / 言語教育カリキュラム |
研究実績の概要 |
医学部におけるリベラルアーツとしての言語教育カリキュラムのあり方を検討することが本研究の目的である。それに関する平成26年度の研究実績は、自律的学習者育成のための言語教育カリキュラムに必要な要素・要因を導出するために授業観察の記録やアンケート調査及び文献調査を行った。今回は、自律的学習者の育成という観点からメタ認知能力に着目し、自己モニタリングと自己評価、自己調整学習に着目して、授業観察やアンケート調査、テストスコアの分析を行った。自己モニタリングと自己評価についての授業開発が進んでいるイギリスの初等・中等教育において、以前に収集したデータを分析し、論文化した。また、英語アカデミック・ライティングは言語教育カリキュラム全体において重要な位置を示すため、この授業に着目した。アカデミック・ライティングに関しては、第二言語習得研究におけるライティング・スキルの向上に関する知見とライティング能力の測定方法に着目し、データ収集と分析を行った。アカデミック・ライティングの授業をどのようにして自律的学習者の育成に向けたカリキュラムに繋げるかを検討するために、学習意欲・自己効力感・学習方略と学習成果の間にどのような関連性があるかを調べた。 また、メタ言語能力の育成や言語カリキュラム評価に関する知見などを基に、国語教育と英語教育の連携を探る言語教育カリキュラムの文献調査及び実際の授業観察やアンケート調査データを分析した。言語能力育成に向けて、今回はメタ文法能力に着目した。メタ文法能力は個別言語文法を超えたところ、つまり母語や外国語など、ことばの仕組みに対して気づく能力である。そのメタ文法能力そのものを向上させることが英語教育においても必要で、単に英語という個別言語の文法能力を超えたところにある言語能力そのものの育成に繋がることを実証的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は大きく分けて2つのアプローチによる研究から成っている。観察記録やアンケート調査を通して、学習者の意欲などの「情意的側面」、自己モニタリングや自己評価などの「認知的側面」、学習方略の使用などの「行動的側面」に関して、実際の授業観察と学習者の学習状況の分析により自律的学習者の育成に必要なカリキュラムを検討していく方法と、これまでの医学部の言語カリキュラムにはどのような形があり、どのような問題点や成果があるかを検討するために、国内外の医学部の言語教育カリキュラムに関するデータを収集して分析し課題を見出す方法である。今年度においては、前者における研究は進んだものの、後者に関しては、計画していた国内外の医学部における言語教育カリキュラムについての情報収集がごく一部の大学のものに留まっており、予定ほど進んでいない状況である。そこで今年度は当初の計画と照らし合わせると、上記のような達成度とした。本研究は、当初、カリキュラム研究を行い、望ましいカリキュラムについての見通しを立てた後、実際のカリキュラム開発に進むという流れであった。しかし、現実問題として、医学部におけるカリキュラム改革は喫緊の課題であり、既に新たな開発と試行が加速度的に始まっている状態である。したがって、カリキュラム開発とその実践を進めながら、同時並行的に成果を分析し、カリキュラムの改善と修正を行うという流れに、本研究も対応する必要性がある。そのため、今後の研究推進方策を修正する形を取ることを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度において十分にできなかった国内外の医学部の言語教育カリキュラムに関するデータを収集し、分類・分析し、医学部全体のカリキュラムにおける言語教育カリキュラムの位置づけと今後の課題についての一般的な知見を見出す。そのようなマクロな視点から言語教育カリキュラムの全体的なあり方について検討するとともに、授業実践と観察、アンケート調査や学業成績の推移の分析を行うといった、学習者の言語学習の実態をミクロな視点から、自律的な学習者を育成するための言語教育カリキュラムについて、更なる検討を続ける。 研究計画当初は、まず、言語教育カリキュラムについての研究を行い、その後、カリキュラム開発へと進むことを予定していた。しかし、医学部におけるカリキュラム改革が全国的に進展している中、勤務大学における言語教育カリキュラムもその一環として例外ではなく、既に英語教育カリキュラム、言語リテラシーカリキュラムが開発され、試行されている状況である。そのため、カリキュラム開発と実践を行う中でのデータ収集と分析、それにより浮かび上がった改善点の抽出と新たな開発と実践という、理論と実践を統合したカリキュラム開発研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度、海外での学会発表を予定していたが、共同発表者の都合などにより、結果的に学会発表をキャンセルしたため、そのための旅費が大幅に次年度への繰り越し金となったことと、購入予定のデスクトップパソコンが部品欠損のため納期未定になるなどで購入しそびれたことなどの理由が重なり、総額的に次年度使用予定額が増えたため。
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次年度使用額の使用計画 |
デスクトップパソコン及びプリンターなどの研究推進のための機器を揃えることと、海外の学会参加(タイにおけるWALS, World Association of Lesson Study)と海外の医学部におけるカリキュラム調査に当てる予定である。
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