研究課題/領域番号 |
26381288
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研究機関 | 新潟青陵大学 |
研究代表者 |
中野 啓明 新潟青陵大学, 看護福祉学部, 教授 (40237350)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 道徳授業 / PISA / 読解リテラシー |
研究実績の概要 |
研究初年度の平成26年度は、以下の研究を行った。 1. モラル・ディスカション等の既存の他の道徳授業モデルとの比較 道徳授業理論・PISAリテラシーに関する文献調査を行うとともに、関連学会に参加し、調査研究を実施した。また、モラル・ディスカッションを提唱するコールバーグの理論的な問題点をケア論の側面から批判的に考察し、日本デューイ学会第58回研究大会において発表した。 2. 資料に対応した「意見文」の作成手法の確立 行動面だけではなく、心情面に配慮した場合の「意見文」の作成手法に関して、研究協力者からの協力を得ながら実験授業を実施した。実験授業及び研究会議等通じて「意見文」の妥当性と授業モデルの検証を行った結果、当初想定していた、[1}資料を提示する(資料を読み込む)、[2}(教師があらかじめ用意した)道徳的価値を含む対立した2つの意見を「意見文」として提示する、[3]相違点や共通点など対立する意見の関係を考える、[4]自分の考えをまとめる、という基本パターンの授業モデルの修正を行った。この変更は、以下の3つの理由に基づく。(1) 心情面に着目した「二つの意見」は、対比的、両義的なものでもありうるため、「対立する」という前提は避けるべきである。(2)心情面に配慮した意見の場合、根拠となる理由を明示しなくても、意見そのものが視点として作用しているのではないか。(3)授業の収束場面においては、二つの意見に共通する道徳的価値を含むキーワードが出てくるような働きかけを構想すればよい。以上の理由に基づき、[a] 資料を提示する(資料を読み込む)、[b] (教師があらかじめ用意した、道徳的価値を含む)二つの意見を提示する、[c] 相違点や共通点など、二つの意見の関係を考える、[d] 自分の考えをまとめる、という基本パターンとすることへの修正を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の研究計画の一つとして、新潟県内の教員を対象とした質問紙調査を行い、既存の他の道徳授業モデルとの比較を行う予定であった。 しかしながら、平成26年度は戦後の道徳教育において大きな転換点となる年度となった。すなわち、平成26年4月には「心のノート」を全面的に改訂した「私たちの道徳」が全小学校・中学校に配布されるとともに、中央教育審議会は平成26年3月に教育課程部会に道徳教育専門部会を設置し道徳の教科化に向けての議論を進め、平成26年10月には「道徳に係る教育課程の改善等について(答申)」を文部科学大臣に提出した。これを受け、平成26年度末にあたる平成27年3月に「道徳の時間」を「特別の教科 道徳」(道徳科)とする学習指導要領の一部改正が行われた。 以上のように、道徳授業を巡る社会情勢が急激に変化しつつある状況の只中にあった平成26年度においては、教員を対象とした質問紙調査を行っても混乱が生じる可能性が否めず、十分な研究成果も期待できないと判断したため、調査は平成27年度に延期することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度以降は、以下の4つの研究計画を予定している。 (1)モラル・ディスカション等の既存の他の道徳授業モデルとの比較:平成26年度の研究を通じて補うべき資料の収集を行い、理論的に修正すべき点を修正するとともに、新潟県内の教員を対象とした質問紙調査を実施・分析し、既存の道徳授業の課題を把握する。この質問紙調査は、平成27年度に実施予定である。 (2)「二つの意見」の作成手法の確立と「二つの意見」のデータベース化と公開:「二つの意見」の作成マニュアルのパイロット版をもとにワークショップを開催し、作成マニュアルの改善を図る。また、作成マニュアルと蓄積した「二つの意見」のデータベース化を行い、WEB 上で公開する。 (3) 図表等を用いた「非連続型テキスト」としての道徳資料の開発と公開:他教科において読解リテラシーを育成するために開発された「非連続型テキスト」の実際例を収集するとともに、道徳的な価値を含む資料であるかどうかの視点から、資料の分析を行う。この結果をもとに、実験授業の実施に向けた資料化を行い、授業実践を通じて検証する。 (4)研究成果の公表:研究成果を整理し、関連学会で発表を行い、他の道徳教育研究者や教員の意見を聞き、今後の改良点を考える上での参考とする。また、WEB上で広く社会や国民に向けて発信するとともに、新たに作成した資料を教員や研究者がエントリーすることにより、共有の幅が広がる仕組みを目指す。 上記の計画を遂行するため、研究協力者との研究会議の頻度を高めるとともに、連絡・協力体制を強化していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述の「現在までの達成度」において述べたように、平成26年度実施予定であった質問紙調査を平成27年度に延期することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に実施予定であった質問紙調査は、平成27年度に実施予定である。
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