研究実績の概要 |
我が国においては、学習指導要領によって学習内容がより系統的な形で定まっており、指導書もあるため、それらによって授業の指導案が作成される。しかし、学習指導要領の単元の並びや学年に習得すべき内容については、実証的なデータとして発表されたものはほとんどない。そのため、学力検査を出版している研究所の協力を得て、4~6年生、計15,000人のデータを項目反応理論で分析した。その結果、4年生では、計算の複雑化に伴う困難度の順序、図形の面積の求め方に関する困難度、5年生では、異分母分数と小数との対応関係の困難度、6年生では、速さ、比例、統計初歩についての困難度が高く、単元の上位にあることが明らかとなった。 また、算数障害スクリーニング検査については、将来的に暗算で行われる四則演算、すなわち、10までの足し算・引き算、20までの繰り上がり・繰り下がりのある足し算・引き算、九九の範囲のかけ算・わり算の範囲の計算の正答数(率)、反応時間(計算時間)がそれぞれの計算式に関して測定できるiPadのアプリケーション(計算測定システムという)を作成した。そのスクリーニング検査のための標準集団としてのデータを収集した。すなわち、足し算・引き算では小学校1年生~4年生4校500名程度、かけ算・割り算では小学校3年生~6年生4校500名程度収集できた。それによって、学年の正答率や反応時間の測定から、子ども達の計算の自動化がどのような経過で行われてきているのかが明らかとなった。小学校6年生の中で比較すると、日本ではかけ算に音韻的に覚えやすい記憶方略があることから、かけ算、繰り上がりのある足し算、わり算、繰り下がりのある引き算の順で正答率が下がった。すなわち、繰り上がり繰り下がりのある足し算・引き算は1年生に習得されるべきものであるが、自動化には時間がかかることが示された。
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