研究実績の概要 |
まず、平成26年度に収集した52組の保護者・通級担当教員のASA社会適応スキル検査の回答結果を分析した。同一の発達障害ないし発達障害が疑われる事例に対する第1回目の評価結果を比較すると、全体の82.69%が保護者>教員であり、対応のある t 検定の結果、日常生活スキル(t=5.53,df,51,p<.01)、社会生活スキル(t=5.77,df=51,p<.01), 対人関係(t=2.48,df=51,p<.05)で保護者が有意に教員の結果を上回り、言語スキル(t=1.84,df=51,p<.10)は保護者が高い傾向を示した。さらに決定木ツリー分析を用い、保護者と教員それぞれの評価の高低に関わる影響因を探索的に検討したところ、保護者は子供の学年、子供の変動性、保護者の自助、教員は子供の学年、回答の不確かさ、子供の情報量、ポジティブ思考傾向が、評価の高低に関わる影響因として示唆された。7組に対して行ったインタビューでも、情報を十分に持ち合わせていない時に低い方に評価したとの報告があった。 次に、両者の評価のズレや要因を精査するために、5組の保護者と通級担当教員への継続的な関わりを行った。1回目の結果報告時に両者の結果をフィードバックし、家庭や通級における対応についてのコンサルテーションを行うとともに、7か月後の2回目評価までの間にも2回程度教員へのコンサルテーションを行った。 最後に、適応スキルを中心とした行動評定における評定者間のズレに関わる最新の研究知見を集めた。これまでは回答者側の要因に着目して分析を進めてきたが、子供の変動性要因が決定木ツリー分析からも示唆されたため、実行機能のの評価法や結果の解釈について、アメリカで情報収集を行い、1つの追跡事例で試行的に実行機能の評価を行った。現在、先の2つの結果と統合すべく、分析を進めている。
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