通常学級における国語・算数の重度学習困難のリスク要因として、読み書きの基礎スキルやワーキングメモリの不全がある。リスク要因に特化した支援は、学習困難のリスク要因の回避に効果的である。本研究では、漢字の読み困難のリスク要因の重複について検討するため、CHAID分析を行った。小学2~6年生児童4519名を対象とした。テストとして、漢字読字テスト及び基礎スキルテスト(特殊音節テスト、単語連鎖テスト)と認知スキルテスト(言語性短期記憶テスト、言語性WMテスト、視覚性短期記憶テスト)を行った。CHAID分析の結果、2~4年生では、特殊音節テストが低成績(10パーセンタイル以下)の者は、漢字読字テストの強い低成績を示した。また、2~3年生では、特殊音節テストは非低成績(11パーセンタイル以上)であるが、単語連鎖テストが低成績の者は、漢字読字の弱い低成績を示した。5,6年生では、言語性短期記憶テストまたは言語性WMテストが低成績の者は、漢字読字の強い低成績を示した。以上の結果から、漢字読字困難の背景要因として、2~4年生では、音韻意識または、ひらがな単語の流暢な読みの弱さ、5~6年生では、言語性ワーキングメモリの機能不全が関与していることが推測される。あわせて、ワーキングメモリ課題遂行中の前頭前野のNIRS応答の発達について、論文発表を行うことができた。これにより低学年の特性を明らかにできた。
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