研究課題
本研究の目的は、知的障害児の身体運動行為の困難について、まとまった行為の実現に関与する認知機能である実行機能、中でもその基礎とされている抑制機能に着目して、両者の関連を検討し、教育支援方法を考案することである。今年度の目的は、抑制機能のアセスメントについて、Nakajimaらの先行研究を参考にして、知的障害者でも簡便に実施しうる課題に改変し、それから特徴を明らかにすることとした。実験参加者は昨年度と同様、特別支援学校児童生徒や知的障害児施設の知的障害児者が約50名である。また、コントロール群は定型発達児で、いずれにおいても学術報告することの許可を得ている。課題として、Go/NoGo課題を参考にした視覚キャンセリング課題を独自に作成した。これは目の前にある刺激がターゲットの場合はチェックをし、ディトラクタ(妨害刺激)の場合はチェックしないという作業を組み合わせたものであり、簡便に短時間で実施できる。合わせて、抑制機能を評価するストループ様課題を作成して同時に実施した。運動課題としては、歩行、バランス、手指運動などの一連の課題を行った。その結果、知的障害児者は定型発達児と比較して抑制課題の成績が低いこと、抑制課題において環境を構造化すると成績が向上する者が存在すること、抑制課題と運動課題の成績はよく相関すること、環境を構造化すると抑制課題の成績が向上する者については、運動課題も意味が分かりやすくなるよう整理すると成績が高くなる傾向にあること、などが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
本年度の目的については、予定した実験参加者を下回ったが、計画以外の課題も同時に行うこともでき、おおむね予定通り遂行した。研究成果の発信についても、国際誌や国際学会を含めて、一定以上の発信ができている。
1年目、2年目とも、実験参加者の人数が予定よりもやや少ないという課題があるが、おおむね計画通りに研究を遂行できている。計画に新たな課題も追加することができて、より多角的に研究を進めることができている。3年目は、1年目、2年目と積み重ねた基礎的実験データをさらに増やすとともに、教育支援の原則についても考案したい。研究発表についても、国際学会や国際誌を含めて発信する予定である。
実験に使用する予定の物品等を購入しなくてもすむ状況になったため、その購入額が減少した。
国際学会参加費にかかる経費、資料収集のための旅費、最終年度の資料整理のための謝金等に活用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
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