研究課題/領域番号 |
26381315
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
別府 哲 岐阜大学, 教育学部, 教授 (20209208)
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研究分担者 |
加藤 義信 名古屋芸術大学, 人間発達学部, 教授 (00036675)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症幼児 / メタ表象 / 多義図形 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(以下、ASDと略す)児が、誤った信念課題に誤答することはよく知られている。Perner(1991)はこれをメタ表象の障害とした。一方同じくメタ表象を必要とすると考えられる多義図形課題について、ASD児は正答できるとする報告が多い(Roper et al.,2003)。しかしそこではCA10歳以上、MA8歳以上の高い年齢のASD児が対象であった。定型発達(以下、TDと略す)児の場合、多義図形課題は4~5歳で通過できるようになるといわれる。そこで、本研究では、就学前通園施設年長児(平均CA5:8)で、PARS(PDD-ASJ Rating Scales)の幼児期ピーク得点が5点以上で、知的遅れが無く(発達指数70以上)、かつ発達年齢(Developmental Age;以下、DAと略す)4~5歳相当のASD児54名を対象とし、多義図形課題の成績を検討した。その際、工藤・加藤(2014)で用いた、①多義図形1枚を提示する条件(通常の提示条件;以下、『1枚提示条件』)と②『2枚提示条件』(同じ多義図形を異なる位置におき、それぞれ別の見えを割り当てられるかをみる条件)を行った。二通りの見えを報告できたもの(すなわち、多義図形課題に正答できたもの)は、1枚提示条件で13名中2名(15.4%)、2枚提示条件で25名中5名(20.0%)であった。先行研究と異なり、年齢が低くなれば、ASD児も多義図形課題が困難になることが示された。一方、今回の実験参加者とDAがほぼ対応するTD児(年中児)の場合、正答者が、『1枚提示条件』では10.5%であるのに対し、『2枚提示条件』では50.0%であり、提示条件により通過率が有意に異なっていた(工藤・加藤, 2014)。『2枚提示条件』での通過率の違いを、メタ表象を構成する能力との関連で検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べたように、PARSの幼児期ピーク得点5点以上、CAが年長児、DQ(発達指数)70以上でDA4~5歳相当のASD児を、就学前通園施設にお願いをしながら2年間で50名以上に承諾を得て実験を行うことができた。結果も予想していた内容が得られており、おおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、PARSの幼児期ピーク得点5点以上で知的遅れは無い(DQ70以上)ASD児で、かつ学童期(CA7歳以上)の子どもを対象にした、多義図形課題の実験を実施中である。このデータを加えることで、今回示した特徴がどのような発達的変化の中に位置づくのか、そしてその結果が示す発達的意味をより詳細に検討できるようになると考えられる。あわせて、ここまでの研究結果をまとめ論文化していくことを今後の課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は予定通り行ったが、人件費・謝金が少なくてすんだために、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度、新規の実験で人件費が余分に必要なことと、国際学会での発表、論文化に伴う費用が予想より必要となるため、そこで使用する計画である。
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