研究課題/領域番号 |
26381316
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
村瀬 忍 (廣嶌忍) 岐阜大学, 教育学部, 教授 (40262745)
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研究分担者 |
松下 光次郎 岐阜大学, 工学部, 助教 (30531793)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | LPC / N400 / ERP / 意味処理 / 言語処理 / 吃音 |
研究実績の概要 |
成人非吃音者13名と成人期吃音者13名を対象として、4語から構成された文章を視覚的に提示し、第4語目に生じる事象関連電位を測定した。その結果、吃音者と非吃音者のN400には、振幅の有意な差が認められた。吃音者のN400は非吃音者のN400に比較して、振幅が有意に小さいことが明らかになった。これは、これまでの吃音者のN400に関する先行研究に示されている結果と同様であった。吃音者の文の意味処理は、非吃音者の文の意味処理とは異なった過程があることが示唆された。 さらに非吃音者と吃音者との両方で、450ミリセカンド以降に陽性成分が観察できた。この遅い陽性成分(late positive component)を詳しく分析した結果、700ミリセカンドと850ミリセカントの間の陽性成分が、吃音者において、振幅が有意に大きくなっていることが明らかになった。吃音者では非吃音者には観察できない脳活動が、遅い時間に生じていると考えられた。吃音者に特有に観察された成分を対象に、頭皮上の電圧の分布を統計的に解析した結果、明らかな電圧分布の特徴は得られなかった。しかし、前頭中央部に電圧が高い傾向が認められた。今後の詳しい分析が必要であると考えられた。N400が減衰しており、一方でLPCが増幅しているという吃音者の結果から、吃音者においては文の意味処理をN400ではなくLPCに依存しているのではないかと推測された。吃音者は非吃音者より文の意味処理に時間がかかっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、アイトラッカーにおいて、吃音者と非吃音者との言語処理の時間的な違いを捉えることができる言語刺激を確立することが目的であった。しかし、N400とLPCという僅かな時間差を捉えることができる言語刺激は完成できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究において、吃音者と非吃音者との文の意味処理の差は約250から300ミリセカンドと考えられる。この処理の差をアイトラッカーの視線で捉えることができる言語刺激の早期の確立が課題である。これが確立できた後は、成人吃音だけでなく小児の吃音者についてもデータを収集する。
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次年度使用額が生じた理由 |
刺激の作成が遅れたため、アイトラッカーを利用した研究が遅れ、謝金や消耗品の使用余剰が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
被験者や分析補助の謝金、脳波計の消耗品等で支出する。
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